重い皮膚炎、診断書出しても マスクできぬと理解されず

 職場でマスクを着用しないことを理由に雇用を打ち切られたのは違法だとして、近畿地方の40代の男性が、KDDIの子会社「KDDIエボルバ」(東京)を相手に雇用契約の確認などを求める訴訟を近く大阪地裁に起こす。

 「会社は病気の苦しさを分かってくれなかった」。男性はそう語る。マスクを着けなかったのは身勝手ではなく、健康の問題だと理解されなかったという。会社側は男性に宛てた書面で、「就業規則や業務指示に従わず、他の社員の安全確保を十分に図れない状況を重く受け止め、契約満了とした」と説明している。

 男性は幼稚園のころに手の甲にアトピー性皮膚炎が出て、10年前には患部が顔にまで広がった。以前の職場でインフルエンザ対策のために、ウイルスを通しにくい不織布製のマスクを着けると、数日後に首から顔、頭皮までが赤く腫れ上がった。まぶたはふさがるほどで、顔中にできた吹き出物から流れ出るうみを、キッチンペーパーで拭った。

 診察を受けても、原因はわからなかった。マスクで通気性が悪くなり、肌がダメージを受けたのかもしれない。ステロイドを含む効果の強い塗り薬で症状は和らいだが、皮膚炎の症状が顔と首にも広がった。

 二度とマスクはつけたくない――。そう思っていたが、コロナ禍で社会環境が激変した。

 会社側は当初、男性の要望を受け入れ、マスクの着用を求めず、昨年10月、口元を覆うマウスシールドを支給した。だが、間もなく上司から「マスクを着用できないか」と打診された。男性が「マスクが(皮膚炎を起こす)刺激になる」とする医師の診断書を出してからも、会社側は就業規則を根拠として「社員が安全に働ける環境を構築する責任がある」として、男性にマスクを着用するよう求めたという。

 男性の代理人弁護士によれば、男性側は会社側に対し、マスクの非着用が就業規則にどう違反するのか示すよう求めるが、会社は就業規則を開示していない。男性は「自分と同じ体質で苦しむ人が全国にいるはずだ。会社の対応を裁判で訴えたい」と話す。

マスクを巡る雇用トラブル 各地で

 対して会社側は、男性側に送付した文書の中で、男性から診断書の提出を受けた後もマスク着用を求めたことを認めたうえで、「診断書では、不織布マスク以外のマスクをつけた際の影響の有無などが確認できなかった」などとして、マスク着用の指示は就業規則に従ったもので正当だと主張している。

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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