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新型コロナウイルスの感染拡大が止まりません。医療の現場では何が起きているのでしょうか。最前線で治療にあたっている国立国際医療研究センター・忽那賢志先生に聞きます。 東京都の重症者は60人で、前日から6人増えました。60人以上となったのは、緊急事態宣言期間中の5月11日以来のことです。 (Q.この現状をどう受け止めていますか)
この数日で重症者が急激に増えています。医療機関としても急に大きな負担がかかります。実際、都内でも劇的な状況になっているところもあるといいます。 東京は、感染した65歳以上は原則入院としていて、26日は65歳以上で83人の感染が確認されました。 (Q.このペースで増えていくと、ベッドが足りなくなるのではないでしょうか)
私の病院でも、すでにコロナ患者のベッドは9割埋まっています。これ以上、増やさないといけないということであれば、今の診療体制では、ベッドも人も限界にきています。ベッドが空けられたとしても人がいない。そういうことになったら、例えば、他の診療科の先生に協力を依頼して対応するという病院も、今後、出てくると思います。ただ、そうなると、普段の診療に影響が出てしまいます。検査なども縮小して、コロナの患者に注力せざるを得なくなるということになります。コロナの患者が増えると他の医療を縮小せざるを得なくなります。今、その段階に来てしまっているといえます。 医療提供体制の警戒度は、引き上げられず、据え置かれました。 (Q.現場の医師としてはどう感じますか)
東京都の判断基準として、第1波のピークの数値を基準にしているのかなと思います。東京都は入院患者数、重症者数の数値自体は、第1波を超えるものではありません。ただ、この数値は、“そこまでは耐えられる”という基準ではありません。正常の医療を維持するためには、あの時の状況は避けなければいけませんので、今、すぐ対応する必要があると思っています。 東京都は2640床を確保しているとしていますが、都の担当者によりますと、すぐに使えるベッドはこれよりも少ないといいます。 (Q.すぐにベッドは使えないのは、なぜですか)
第1波の時から、ずっとコロナの患者のためにベッドを確保しているところもあります。第1波以降、流行が落ち着いたころに、コロナ前の医療体制に戻しているところは、急にベッドを確保してほしいといわれても、人手や、他の患者が入っていたりするので、すぐに準備はできない。 (Q.実際に医療崩壊が起きてしまったときに危惧することは、どのようなことがありますか)
医療崩壊というのは、一般的に提供すべき医療が提供できなくなった状態をいいます。爆発的な感染が起きたアメリカでは、脳梗塞や心筋梗塞などの報告数が、ことごとく減っています。これは本当に患者が減ったわけではなく、本来、行われるべき診断や治療が行えないほど、医療がひっ迫しているということを意味します。だから、日本がこうした状況になることだけは避けなければいけないと思います。 (Q.以前に比べて死亡者数は抑えられているのでしょうか)
第1波のころと比べると、発症してから診断されるまでの期間が短くなっているので、重症化する前に診断され、適切な時期に治療が開始されるということが多くなっています。治療薬に関しては、この数カ月、大きくは変わっていませんが、私たちの経験が増えていますので、そういう意味では、救える命は増えてきているのではないかと思っています。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース