「契約した覚えがないのに東京電力との契約成立の書面が届いた」――。高齢者らを対象にした、こうした強引な勧誘実態を隠すため、通話記録を編集する不正が行われていた。背景には、電力自由化による顧客獲得競争の激化があった。
「東京電力エナジーパートナー」(東電EP)から電話勧誘業務を受託した「りらいあコミュニケーションズ」による音声の編集手法は2パターンある。一つは、契約を得られなかったはずのやり取りなどを削除する改ざんだ。
オペレーター(以下、オ)「このお電話でご契約成立となります」
女性「成立ってことになっちゃうんですか?」
オ「いえいえ、しません」
女性「ですよね。書類をアレしてでしょ」
オ「書類が約1週間後に届きまして、それを確認していただいて」
女性「分かりました」
実際はこんなやり取りがあった千葉市若葉区の高齢女性との会話は、編集によって最初と最後の発言以外が削られ、「契約成立になります」「分かりました」と契約を了解する形になった。
契約獲得でしのぎを削る東京ガスを意識した、オペレーターの発言も削除された。東京都江戸川区の男性(85)に「東京ガス、何のメリットもない。割引が効いていない状態」、千葉市稲毛区の男性に「みな(東電に)切り替え済み」と伝えた部分などだ。りらいあ社は「他社のサービス内容に関して誤った発言をしていた」としている。
東電のサービスについて、実際はない内容を紹介した文言もカットされていた。ガス機器の修理サービスをめぐり、東京都江戸川区の別の女性(77)には「東電の者が(自宅まで取りに)やってきます」、「掃除(サービス)もあります」と説明していたが、いずれも編集で削られた。
電話勧誘では、電力自由化やプランの詳細をオペレーターが口頭で語る。理解できずにいる顧客が、納得したように編集されたケースも目立つ。東京都東村山市の男性は「流暢(りゅうちょう)な言葉でざーっと流されたけど、素人だから分からない」と漏らしたが、編集で消えた。(中野浩至、北沢拓也)
「いや~分かんない」が「よくわかりました」に
りらいあ社の社員が「替え玉」と呼ばれる客役を務め、会話を作り直す捏造(ねつぞう)パターンもある。音声編集の経緯を知る関係者によると、「やり取りの大半に問題があり、編集しきれない」場合に採用された。
千葉県佐倉市の高齢男性は、実…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル