岐阜市で昨年3月、路上生活をしていた渡辺哲哉さん(当時81)が襲われ死亡した事件で、傷害致死の罪に問われた元少年2人(ともに20歳)の第4回公判が16日、岐阜地裁(出口博章裁判長)であった。2被告のうち、無職の元少年の被告人質問などがあり、「渡辺さんが追いかけてくるスリルや恐怖感を味わっていた」と述べた。
無職の元少年は、野球推薦で大学に進学したが、けがの影響もあり、大学1年の夏に退学した。事件時はアルバイトも辞めていた。
昨年3月上旬、もう1人の被告らと行った愛知県の心霊スポット近くの公園でホームレスの人を見かけた。岐阜市の河渡橋の下にもホームレスがいたことを思い出し、その日のうちに友人らと河渡橋に行き、渡辺さんや一緒に暮らす友人女性に投石した。その後も複数回、友人らと投石などを繰り返した。
同月25日午前1時半ごろ、元少年は友人4人と河渡橋を訪れた。証拠品として提出されているスマートフォンの通話アプリの音声記録によると、元少年はもう1人の被告に投石の合図を送った。元少年は「自分は合図をしただけで、石は投げていない。投げる振りをした」と主張。「『投げない』と言っても仲間に納得してもらえないと思った」。渡辺さんらを追いかける過程では、石を2回、渡辺さんの2~3メートル手前に投げたという。
元少年は「当時、死にたいと思っていて、それ以外どうでもよかった」と説明。
もう1人の被告の弁護人から「死にたいことと、河渡橋に繰り返し行くことはつながらない」と指摘されると、「河渡橋に行くこともどうでもよかった。消極的だったわけではないが、具体的なことは何も考えていなかった」と述べた。
裁判員から河渡橋に繰り返し行った理由を問われると、「楽しいというより、投石で渡辺さんに鉄の棒を持って追いかけられたり、石を投げ返されたりする恐怖心を味わっていた。心霊スポットより恐怖心が味わえたので何度も行った」と説明。渡辺さんや友人女性に謝罪の言葉は述べた一方で、「自分の今後についてもどうでもいい」と話した。
起訴状などによると、2人は無職の元少年(20)=傷害致死の非行内容で少年院送致=と共謀し、昨年3月25日午前1時半ごろ、岐阜市の河渡橋で、路上生活をしていた渡辺さんらに投石を開始。逃げる渡辺さんらを約1キロにわたって追いかけ、石を複数回投げつけた。土の塊を投げた際、渡辺さんの顔面に命中し、後ろへ転倒。渡辺さんは後頭部を路面に打ち付け、脳挫傷などにより死亡したとされる。11日の初公判では、被告の2人は起訴内容を認めた。(松山紫乃)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル