渡辺松雄、小川直樹
国営諫早湾干拓事業(長崎県)をめぐり、金子原二郎農水相が20日、10月の就任後初めて現地を視察に訪れた。堤防排水門の開門を求める訴訟の原告漁業者らの訴えに、金子氏は「意見の相違を乗り越えながらどういう解決方法があるかを考えているが、なかなか難しい」と応じ、開門を拒む国の立場は崩さなかった。
国は干拓事業を巡り、開門しない代わりに有明海再生のための100億円規模の基金創設による解決を主張してきた。開門を強制しないよう国が求めた訴訟の差し戻し審では和解協議に応じず、福岡高裁で年度内に判決が出る見通しだ。
佐賀市での意見交換で、開門訴訟原告のタイラギ漁師、平方宣清(のぶきよ)さん(69)=佐賀県太良町=は「(基金の)100億円でアサリやタイラギ、クルマエビが取れる海にすると約束するなら、裁判も取り下げますよ」と訴えた。金子氏は「有明海を再生したいという気持ちは私たちも持っている」と応じた。
金子氏は長崎県諫早市の諫早湾干拓地でレタスの大規模ハウス栽培を視察後、開門に反対する営農者らとも意見交換した。長崎県知事在任中に事業を推進した金子氏は「最大限に干拓地を生かして営農の成果を上げていると聞き、干拓をやって間違いなかったと改めて思った」と述べた。
中村法道知事は、県内各地に被害をもたらした8月の大雨について触れ、「大きな被害に至らず、(干拓事業の)防災効果が十分に発現された」と強調。開門せず有明海を再生するよう金子氏に求めた。(渡辺松雄、小川直樹)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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