銅やアルミニウムといった金属製の建材や備品の盗難被害が全国で急増している。中でも、被害件数が全国で突出しているのが茨城県だ。いったい、何が起きているのか。
茨城県常総市の下水処理施設は昨年4月以降、すでに6回、金属盗の被害に遭っている。アルミ製の門扉やフェンスが盗まれ、現在も修理が手つかずの状態だ。
「これからも同様の被害を受ける可能性はゼロではなく、どう修復するべきか、まだ決まっていない」。施設を管理する常総市下水道課の担当者は、こう嘆く。
6回目の被害は、今年3月。朝、出勤した職員が気づいた。
高さ140センチのアルミ棒が柵状に連なり、敷地を取り囲んでいたフェンスのうち約480本が外されていた。車の出入りを制限するための門扉も、工具などで取り外されていた。
防カメ設置も相次ぐ被害
同課によると、施設では昨年4月~今年1月にも計5回、同様の被害があり、アルミ棒計600本以上が盗まれた。昨年11月に約60万円をかけてフェンスを修復し、今年1月には警察の協力で防犯カメラなどを設置したが、その後も被害に遭った。
施設は田んぼに囲まれて街灯が少なく、常在している職員もおらず、警戒を続けるのが難しいという。
動きがあったのは、今年5月。常総市内のバイク塗装業の男が、3月に施設から門扉やフェンスを盗んだ疑いで県警に逮捕された。「買い取り業者に被害品の門扉を持ち込んだことが端緒になった」と警察は常総市に説明したという。
名古屋でも、佐賀でも
同様に、金属製の建材や備品が盗まれる被害は全国的に相次いでいる。名古屋市の太陽光発電施設では今年1月、電線計約3100メートルが盗難被害に遭った。佐賀県内の各地でも、道路の側溝に設置している鉄製のふた(グレーチング)が計80枚以上盗まれる被害が2月までにあった。
盗まれる金属の種類はアルミや銅線、鉄など多岐にわたる。
アルミに関しては、世界的に価格が高騰していることが影響していそうだ。
昨年2月のロシアのウクライナ侵攻をきっかけに、同月の金属価格の主要指標を扱うロンドン金属取引所(LME)で、アルミニウムの先物価格が13年半ぶりに最高値を更新。ロシアがアルミの生産大国のためだ。
現在はLMEの価格は下落傾向にあるが、金属買い取りをする東京都内のリサイクル業者によると、数年前には1キロ100円以下~100円台前半だったアルミ缶の買い取り価格は、現在は160円台と依然、高値の影響が続いているという。
2年間で被害倍増
金属盗の被害が後を絶たないことを受けて、警察庁は2020年から、被害件数の集計を始めた。同庁によると、20年は全国で5478件の被害が確認されたが、2年後の22年は1万368件に上り、2倍近くにまで急増している。
中でも茨城県内の被害は全国最多で1632件(15・7%)。2番目の埼玉のほぼ2倍の件数だった。
なぜ、茨城が狙われるのか。
県警によると、県内では太陽…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル