花を置こうかな、この常夜灯の下に。時間は金曜の日暮れから。名前は「よるだけのお花やさん」にしよう。
澤田鈴子さん(42)は、そんな思いで今年7月から「お花やさん」を始めた。場所は、自身が運営する「澤田写真館」(東京都文京区本駒込)の軒先。金曜の夕方になると、階段の一段一段に、赤、白、紫と色鮮やかな花を並べる。立てかけた黒板には「1本からお気軽にどうぞ♪」とチョークで書いた。
店員はいない。道行く人が足を止め、一輪手に取り、箱の中にお金を入れていく。写真館の玄関に掲げられた常夜灯の明かりの下で、花と客との静かな会話が夜遅くまで続く。
お花やさんを始めた頃、都内では新型コロナの感染が拡大していた。東京五輪の開幕が2週間後に迫っているのに、街に活気はなく、夜になると周辺の店が次々と閉まっていった。
静まりかえる街を見て、鈴子さんは思った。「帰り道のコンビニで必要な物だけを買う生活では、心がくたびれてしまう。季節を感じたり、きれいなものを見たりしないと」。真っ暗な夜に、小さな彩りを。1週間頑張ったご褒美にささやかな安らぎを。そんな願いで、金曜の夜、花の無人販売を始めることにした。
夜にした理由は、もう一つあった。大好きな祖父、政恒さんからの教えだ。
■「街が暗いと危ない」 祖父…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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