鉄道ジオラマ博物館、歴史に幕 四半世紀ファンに愛され

 巨大な鉄道模型のジオラマを展示する私設ミュージアム「トレインギャラリーNAGANO」(長野県須坂市)が14日、およそ四半世紀の歴史に幕を閉じる。オーナーで館長の深沢慶一さん(76)=長野市=が、体力の衰えから決断した。新型コロナの影響で客が激減したことも一因という。

 深沢さんは幼少期から大の鉄道好き。毎日、長野駅近くの跨線橋(こせんきょう)で列車を眺めていたという。小学生のときに祖母から電気機関車の模型をもらい、鉄道模型にのめり込んだ。家業の酒卸業やコンビニ経営の傍ら、約4千両を収集。新幹線の長野駅が開業した1997年、コレクションを公開するトレインギャラリーをオープンした。

 展示の目玉は、約60畳分の広さの巨大なジオラマ。善光寺や碓氷峠など長野らしい景観を配し、国鉄時代に製造された車両「115系」や特急「あさま」などゆかりの電車のほか、引退した0系新幹線「こだま」や寝台特急「北斗星」など往年の約400両が自動制御で走る。

 模型はすべて、Nゲージ(レール幅9ミリ)より大型のHOゲージ(同16・5ミリ)と呼ばれるタイプ。JR姨捨(おばすて)駅(千曲市)でスイッチバックして入線したローカル線の電車を特急「しなの」が追い抜くなど、実際の運行を再現したこだわりのジオラマは鉄道ファンからも愛された。開業当初は、1日3千人が入館することもあったという。

 ただ、受け付け業務は家族らが手伝うが、老朽化したジオラマのメンテナンスや模型の修理などはすべて深沢さんが1人で担ってきた。年中無休をやめるなどしたが、「体力的に限界だった」(深沢さん)。新型コロナの影響で、県外の観光客らが激減したことも決断を後押ししたという。

 常連客からは親しみを込めて「お父さん」と呼ばれた深沢さん。「若いころからの夢だった博物館をオープンできて幸せだった。寂しい気持ちもあるが、小さい子どもから年配の夫婦まで、多くの人たちに喜んでもらえたので悔いはない」と話した。

 14日まで毎日午前10時~午後2時(12日のみ正午~午後2時)に開館。入館料は大人800円、小中高生400円。模型車両の多くは希望者に有償で譲る(応相談)。施設のシンボルで、屋外に展示する引退した長野電鉄2500系の実車2両は現在、譲渡先と交渉中という。問い合わせは、トレインギャラリーNAGANO(026・248・4188)へ。(滝沢隆史)


Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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