銀シャリが守りたい、早送りできない価値 進むタイパ社会で練る笑い

 「同じ時間でも、ボケあと5個は入れられるよ」

 11月下旬、大阪市にある吉本総合芸能学院(NSC)大阪校。芸人の卵たちのネタが終わると、ベテラン講師の本多正識(まさのり)さん(64)が投げかけた。

 ある鉄則を伝えるためだ。

 1秒でも早くつかめ――。

 最初のフレーズで客を引き込む。でなければ逃げられる。

 「つかみは年々加速している」

 NSCで30年以上講師を務め、ナインティナインやかまいたちなど人気芸人を指導してきた本多さんの答えだ。

 本多さんによると、1980年代までは15分のネタを披露できるテレビ番組もあったが年々減った。

 持ち時間が短くなるなか、ネタの「手数」を増やし、スピードを速める芸人が増えた。

歴代M-1王者のつかみ

 この加速化を決定づけたのは、若手漫才師の日本一を決めるM―1グランプリだと本多さんはみる。

 持ち時間は4分。

 「M―1が100メートル走なら、劇場の漫才は1500メートル走や3千メートル走。種目として明らかに違う」

 本多さんの調べでは、歴代優勝者の最初の笑いまでの時間は平均6秒。「少なくとも10秒以内に必ずひと笑い取っている」

 12月10日。吉本興業の劇場「ルミネtheよしもと」(東京都新宿区)。

 ステージに2016年のM―1チャンピオン「銀シャリ」が飛び出した。

 第一声は客席で起きた直前の出来事。

満員の会場を1秒で笑いに包んだ銀シャリ。動画コンテンツがあふれ、倍速視聴が広がる「タイパ」時代に、お笑い芸人はどうなっていくのでしょう。記事後半のインタビューで語り尽くします。

 ぽかんと空席になっていた前…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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