30人だけになった2020年2月、61次隊の越冬が始まった。日本から1万4千キロの昭和基地で約10カ月、孤立無援となる。
「夏が終わったね」。60次越冬隊と夏隊が帰途へ着いた後、夏期宿舎の掃除に来た仲間と話す声が響く。席が足りないほどにぎやかだったのに、今はがらんと広く見える。次の隊が来るまで閉める。といっても戸締まりではない。よそから来る人も、見知らぬ人もいないので、南極では鍵は不要、電気や水道を止める。配水管に水が残っていると凍って壊れてしまうので、建物設備の三機工業出身の村本悠輔さんが水抜きをする。作業を手伝いに私も出向いた。
「そこで見ていて」と洗面台前に立たされた。「出た?」と階下で操作する村本さんの声が無線機から響く。蛇口からしずくがたれた後、ゴーと音が聞こえてきた。エアを送って水を抜く。制御室では入り組んだ水道管の所々をはずし、水を抜ききる。「一人いてくれると助かる」と言われてうれしくなった。力仕事では役に立てないが、工具はうまく使えば意外に大きな力が働く。スパナを手に作業が楽しくなってきた。
9月25日 南極記者サロン
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屋外では環境保全担当の佐藤…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル