芳垣文子
海水浴場は慣れ親しんだ名のまま――。神奈川県鎌倉市は来年度から、海水浴場に命名権(ネーミングライツ)の設定をしないことを決めた。「鳩サブレー」で知られる「豊島屋」(鎌倉市)が今年度まで10年契約で命名権を取得したが、親しまれた名称を残そうと名前を変えずにいた。海水浴場名は今後も守られることになる。
市は「由比ガ浜海水浴場」「材木座海水浴場」「腰越海水浴場」について、監視員の配置や清掃など維持管理費に充てるため、2013年に命名権を公募。ただ、市民からは長年親しまれた海水浴場の名前を変えないでほしいとの声が、命名権の設定当初から強かったという。
豊島屋は、他の企業に買われて名称が変わるのを避けるために応募したといい、法人や個人が名乗りを上げるなか、年間1200万円で10年間の権利を取得した。豊島屋の久保田陽彦社長は「海水浴場のような公共的なものに命名権を設けることには違和感を感じていた」といい、「一石を投じることができたとしたら光栄だ」と話す。
市民が寄せた反対の声
豊島屋との命名権契約は今年度で満了となる。市は今後について検討。契約の更新や新たな公募をせず今後は命名権を廃止することを決めた。市観光課は「名称変更については市民の反対の声が強かったことなどを考慮した。海水浴場の維持管理費用の捻出については、別の取り組みを考えていきたい」としている。
スポーツ施設や公共の建物などに企業や商品の名前を入れる命名権は2000年代初めころから日本でも普及し始めた。命名権を取得した企業の都合で施設の名称が変わり、なかなか定着しないなどの課題も指摘されている。
豊島屋の久保田社長は「建物や球場など構築物への設定は理解できる」とし、鎌倉にある民設民営のサッカー場を「みんなの鳩サブレースタジアム」としている。(芳垣文子)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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