外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦がニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(6月28日放送)に出演。諫早湾の干拓事業を巡る裁判について解説した。
諫早湾の干拓事業~最高裁が堤防は開門せずと判決
長崎県の国営諫早湾の干拓事業を巡る裁判。漁業者たちは堤防の締めきりによって魚介類が減るなどの影響を受けたと主張し、国に対して堤防の開門を求めていたが、最高裁判所は漁業者側の上告を退ける決定をし、開門の必要はないという判決で確定した。最高裁で開門を認めない判決が確定するのは初めてのこと。
飯田)28日朝、朝日新聞が1面トップで伝えていますが、これはいろいろとこんがらがっていまして、まず4本の訴訟がある。1本目は2002年に漁業者側が「門を開け」という提訴をした。また漁業者側がもう1本、2008年にも長崎地裁に訴訟をしていて、漁業者側が2本出していた。その内の1本が門を「開け」という漁業者の勝利、そしてもう1本は「門を開けなくてよい」という漁業者敗訴。この漁業者敗訴の方が上告をしていて、今回の裁判になっているということです。またそれとは別に、農業者側が漁業者勝利を止める為の裁判、開門はしないでくれという仮処分を求めるような裁判もやっています。開門しろという漁業者勝利の判決は高裁まで出たのですけれども、上告を時の政府が取り止めたことがあって、最高裁は判断をしていないのだけれど、上告を取り止めたから1つそこで確定判決が出ている。何だかこんがらがっていますね。
宮家)非常に複雑ですよね。しかしよく考えてみたら、本来は最高裁がいちばん上なのだから、最高裁に持って行って最後は決めてもらわなくてはいけないでしょう。訴訟が2つあって、そして2つ別々に判決が出てしまったけれども、「開け」と言った漁業者の勝利が高裁レベルで確定してしまった。本来だったら、時の政府は確か「それでいい」と政治的判断をしたのですよね。しかし、やはり最高裁まで行くべきだったのではないですか。それをやっていれば、こんな混乱はなかったのかもしれない。
飯田)上告をしなかったのは2010年の政権でありまして。
宮家)思い出しますね。もちろん政治判断をすることは大事なのだけれど、このような大きな問題について中途半端な形で判断するのは如何なものか、片方を最高裁まで上げれば状況が変わるのは分かっているわけだから。いまから思えば少し無責任だったのかな、ちょっとわからないなという思いですね。
上告をとりやめた「時の政権」は民主党政権
飯田)朝日新聞は、これを社会面まで割いて大きく取り上げているのですが、政治に振り回されたという書き方をしています。2010年の政権は民主党政権。
宮家)振り回されたと、朝日新聞が言っているのならばそうなのでしょう。振り回してはいけないですよね。法律の問題は法律の問題で、政治的な判断を入れなくてはいけない部分がないとは言わないけれども、まず法的にしっかりしなくては、2つ別々の判決が確定させてよいことはありません。でもこの後、高裁で確定した判決に関して、本当に効力があるかということを最高裁で判断するのだから。それで最終的に決定されるのであれば、もう少し時間をかけて決着させるということですかね。
ニッポン放送
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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