関西電力の役員らが、関電の原発が立地する福井県高浜町の元助役(故人)側から多額の金品を受け取るなどした問題で、関電と株主が森詳介元会長ら旧経営陣6人に損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が6日、大阪地裁であった。旧経営陣側は、請求を棄却するよう求める答弁書を提出し、争う姿勢を示した。
関電は、金品の受領を取締役会に報告しなかったことが取締役としての注意義務に違反する、と主張。東日本大震災後の電気料金値上げに伴いカットした役員報酬の一部を、退任後に嘱託報酬の形で補塡(ほてん)することを旧経営陣が決めたことも「法令や社内手続きに違反しないようにする義務」に違反したとしている。
一方、株主側は、旧経営陣の報告手続きだけではなく、金品受領そのものが違法であり、役員報酬の補塡自体が「利用者への詐欺的行為」と主張している。
これに対し、旧経営陣側は「(受け取った金品は)預かり保管していただけ」などと説明。役員報酬の補塡は「業務の正当な対価だった」と反論した。
この日の弁論で、株主の一人が意見陳述し「社会的な常識からかけ離れた思考回路で会社の経営方針が決められてきたことが問題だ」と訴えた。(森下裕介、松浦祥子、浪間新太)
株主側弁護団「関電のストーリー崩すのが仕事」
この日の法廷では、別の訴訟で争っている関電側(現経営陣ら)と株主側がそろって原告席に並んだ。関電は旧経営陣を、株主側は現旧経営陣の責任を問う訴訟を起こしていたが、旧経営陣に損害賠償を求める部分では同じとみた大阪地裁が、一部を併合して審理すると決めたためだ。
口頭弁論の後、記者会見を開いた株主側弁護団の井戸謙一弁護士は、旧経営陣が金品を受け取ったこと自体の違法性を関電が追及していないことを問題視。「そのストーリーを崩すのが我々の仕事だと思っている」と述べ、関電の責任追及が甘いとの認識を示した。
金品受領や役員報酬を巡り、森元会長ら9人は会社法の収賄や特別背任などの容疑で市民団体から刑事告発されている。大阪地検特捜部が昨年10月に受理し、今年3月以降、元役員らを任意聴取するなど捜査を進めている。
市民団体は同日、大阪地検を訪れ、起訴するよう申し入れた。株主代表訴訟と市民団体の両方で代理人を務める河合弘之弁護士は「刑事でも民事でも不正を徹底的に追及し、関西電力をまともな会社にしたい」と語った。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル