佐藤常敬 荻原千明 永井啓子
40年超の老朽原発を含む福井県の関西電力美浜原発3号機と高浜原発1~4号機をめぐる2件の仮処分で、福井地裁(加藤靖裁判長)が29日、運転を停止するかどうかの判断を示す。建物倒壊や道路寸断に見舞われた能登半島地震を経て、避難計画の実効性がどう判断されるかが注目される。
住民側「能登地震級なら避難できず」
運転差し止めを求めているのは福井県内の住民ら11人で、うち5人が原発の5~30キロ圏で暮らす。「実現可能な避難計画がない中での原発の運転は、危険で許されない」。いずれの申し立てでもそう訴える。
国の原子力災害対策指針は5~30キロ圏内の住民について、放射性物質が放出される事故が起きれば①まずは屋内退避し、②放射線量が上がれば遠方に避難する、と定めている。これに対し、福井県は地域防災計画のほか、避難先や避難ルート、輸送手段などを定めた要綱を作成。内閣府などとも協議会をつくり、「緊急時対応」をまとめている。
こうした避難計画について住民側は、原発のある県南部で最大震度7の地震が起き、建物約1万2千棟が全壊するなどと県が想定していると主張。その場合の退避する建物や代替避難ルートが具体的に定められていないと訴える。
さらに、住民らが懸念を強めたのが元日の能登半島地震だ。北陸電力の志賀原発がある石川県志賀町などで最大震度7を観測した。
石川県によると、全半壊した住宅は約2万3800棟(3月26日時点)。国土交通省によると、県内409カ所(同22日時点)で土砂災害が起き、能登半島の「大動脈」である国道249号が寸断された。
住民側は地震後、改めて避難計画の不備を訴える書面を提出。「能登半島地震の被害に照らせば、地震による原発事故が起きた場合、屋内退避ができず、避難もできず、被曝(ひばく)を強いられる」と主張した。
■関電側「緊急時対応は国指針…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル