わずか1週間で閣僚2人が相次ぎ辞任する異例の事態となった31日、国会は与野党の攻防で空転した。自民党と立憲民主党は安倍晋三首相が出席する衆院予算委員会の集中審議の日程をめぐり協議を重ねたが、立民側は徹底抗戦の構えを崩さず折り合わなかった。今国会の焦点である日米貿易協定承認案について、政府・与党が目指す11月上旬の衆院通過は厳しさを増しており、与党内には会期延長を求める声も出ている。
「辞任が続いて申し訳ない」
首相は10月31日朝、公明党の山口那津男代表に電話し、菅原一秀前経済産業相に続いて河井克行前法相が辞任することを陳謝した。
与党は「今度閣僚の不祥事が出たらアウトだ」(自民党ベテラン)と危機感を強める。菅原氏辞任後の10月29日に首相が山口氏と官邸で会談し、緊張感を持って政権運営にあたることを確認した直後に河井氏に関連した疑惑が浮上、「辞任ドミノ」に至ったためだ。
山口氏は31日の党中央幹事会で河井氏の辞任に言及し、「二度と起きないよう、気を引き締めて対応することが極めて重要だ」と強調した。同党の北側一雄中央幹事会会長も記者会見で「極めて残念で遺憾だ」と苦言を呈した。
対する野党は首相の任命責任追及に加え、国会審議や日程協議に応じない方針を突きつけ、政府・与党を揺さぶる構えだ。
立民と国民民主、共産、社民各党の幹事長らは31日、国会内で会談して連携を確認した。会談後、立民の福山哲郎幹事長は記者団に「2人の主要閣僚が辞任するに至った。内閣総辞職に値する異常事態だ」と語気を強めた。
4党は、大学入学共通テストへの英語民間検定試験の導入延期を求める方針でも足並みをそろえる。31日には国会内で当事者の受験生を招いた集会を開催。萩生田光一文部科学相の辞任も要求する構えだ。野党国対幹部は「まだサイドメニューだ。問題の閣僚はあと3、4人いる」と語る。
国会会期末を12月9日に控え、政府・与党は国会審議への影響を最小限に抑えたいのが本音だ。
来年1月の発効に向け、日米貿易協定の今国会での承認を確実にするには11月上旬の衆院通過がハードルの一つとなる。審議日程の先送りは避けたいところだが、河井氏辞任のあおりを受け、10月31日は衆参の審議予定が流れた。
こうした中、自民党の森山裕、立民の安住淳両国対委員長は断続的に会談。与党は衆院予算委の集中審議を11月11、12両日に開くのと引き換えに1日から国会を正常化させることを提案したが、野党は集中審議の前倒し開催を要求し、協議は決裂した。
森山、安住両氏は1日に再び会談して仕切り直すが、立民国対幹部は「1日に委員会審議を再開させるなど無理だ」と突き放す。
自民党国対幹部は「野党の要求は高すぎる」といらだちをあらわにする。与野党双方が一歩も譲らず、落としどころはまだ見えない。(大橋拓史、千葉倫之)
Source : 国内 – Yahoo!ニュース