新型コロナウイルスの感染拡大は人々の暮らしを大きく変えました。医療従事者、夜の街で働く人たち、インバウンドが消えたゲストハウス、東京五輪、パラリンピックが延期になった選手、厳しい状況の外国人留学生…。色々な立場の人たちを訪ね、コロナ禍に見舞われた「私たち」の2020年を伝えます。
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東京都西多摩地域の40代男性は仕事が無かった5月、ランニングを始めた。「何もしないと、引きこもってしまうかも、という恐怖があった。動くことを止めたくなかった」。自身の現状を頭で整理し、心を落ち着かせ、毎日のように約15キロを100分走る。体重は7カ月で12キロ落ちた。
非正規雇用で2017年末からイベント会社で働き始め、ラグビーやサッカー、音楽ライブなど数万人規模の案内業務を務めた。だが3月、新型コロナウイルスの感染拡大でイベントが軒並み中止になり、月20万円前後あった収入は4月からゼロになった。
会社から現状説明はなく、ホームページで会社の臨時休業を知った。今後の相談をしたくても、連絡が取れない時期が続いた。休業手当は出ず、7月に自主退職した。「仕事、お金、将来を考え、頭痛がしていました。会社から都合のいいように扱われた」
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非正規雇用労働者はコロナ禍の影響を大きく受けた。総務省の労働力調査によると、10月時点で非正規の雇用者数は2111万人。新型コロナ感染が深刻化する前の2月時点と比較すると、48万人減少した。一方、正社員の雇用者数は2月と10月では5万人の違いだった。
電話やメールで労働に関する相談を受け付けている、東京地評・労働相談センター室長の柴田和啓(かずひろ)さん(70)は「解雇や契約を更新されない雇い止めの人が多くいる。コロナ禍が落ち着かない限り、さらに厳しくなる。就職も難しく、今は生きるための生活相談のステージに変わってきている」と危惧する。
男性は両親と暮らす実家の自室で毎日、就職サイトから1、2社に応募する。約300社に申し込み、面接に進めたのは4社のみ。就職先は決まらず、「先行きは何も見えていません」。暗い夜道を一人、走る日々が続いている。(長島一浩)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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