馬毛島(鹿児島県西之表市)への米空母艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP)移転と自衛隊基地設置計画をめぐり、防衛省が島周辺でのデモ飛行を5月11、15日に行うことがわかった。FCLPや自衛隊機の訓練騒音の程度を体感してもらうために実施するが、地元では騒音への懸念が根強く、「説得材料にされかねない」との懸念の声も上がっている。
FCLPは、空母の甲板に見立てた陸上の滑走路で、複数の戦闘機が「タッチアンドゴー」と呼ばれる離着陸を繰り返す訓練。馬毛島では、風向きや計器、有視界の飛行方法によって8ルートが予定されており、約10キロ離れた種子島の近くを飛ぶルートもある。
関係者によると、デモ飛行には、FA18などの米空母艦載機に代わり航空自衛隊のF15戦闘機を使用。馬毛島上空や周辺の各ルートで、日中は6機、日没前後は2機での編隊飛行を計画している。馬毛島には現時点で滑走路がなく、離着陸は行わない。馬毛島でのFCLPは、現在訓練が行われている硫黄島(東京都)と同じ5月に予定され、デモ飛行も同月に実施するという。
デモ飛行の騒音は、西之表市など周辺自治体で計測する。防衛省は馬毛島での訓練騒音や基地建設をめぐる環境影響評価(アセスメント)を2月に始めたが、デモ飛行のデータは「時々の実測値が適正な評価になるとは限らない」として、アセスに反映させない意向を示している。
岸信夫防衛相は17日、馬毛島での自衛隊基地整備に関して、「これまで住民説明会を累次行い、地元から特に騒音問題について具体的に知りたいという声もあった。そうした状況を踏まえ、自衛隊の戦闘機によるデモフライトの実施に向けた検討に入っている。詳細は近日中にお知らせしたい」と話した。訪問先の沖縄県与那国町で記者団の取材に応じた。
鹿児島県はFCLPへの賛否を示していないが、塩田康一知事はデモ飛行について、朝日新聞の取材に「地元住民の訓練騒音に対する関心は高く、デモ飛行が疑問に答える材料になればいい」と話した。
地元住民らでつくる「馬毛島への米軍施設に反対する市民・団体連絡会」の山内光典事務局長は、「FCLPの訓練機と違う機種が離着陸せずに上空を旋回するだけでは、実際の騒音状況が反映されるのか疑問」と指摘。「計画を進める材料にされる懸念がぬぐえない。米軍機が想定ルートを外れて種子島上空を飛びかねないという、根本の問題も残る」と話した。(奥村智司)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル