東孝司
数多くのベテランが所属する阿波踊りの有名連と違い、大学生で構成する連は卒業や入学でメンバーが入れ替わる。屋外演舞場を含む本格的な阿波踊りが2年続けて開催されなかったことで経験者が少なくなり、活動が途絶えかけた連もあるが、何とか踊り手を集め、3年ぶりの本番を迎えようとしている。
徳島大学理工学部応用化学システムコースの学部生や大学院生でつくる「化応連」は、伝統ある学生連のひとつ。研究室に配属された学部4年生と修士1年生を中心に連を構成するのが近年の慣例だった。その年の修士1年が取り仕切ってきたが、2年続けて阿波踊りの機会がなかったため、今年の修士1年に本番を知る人はいなかった。
夏に向けて連を立ち上げられないまま、ずるずると時間だけが過ぎていく。いつもなら練習を開始している6月になっても始動できなかった。
この危機に、3年前に学部3年の時に阿波踊りを経験した修士2年の3人が、急きょ運営に加わることに。本番までの流れを詳しく知る修了生に連絡を取ったり、過去の資料を読み込んだりして、態勢を整え始めた。
2年のブランクで連の知名度が低くなり、連員集めにも苦労した。かつては100人を数えたが、今夏は全学年に参加を呼びかけて何とか約40人をそろえた。
こうして練習を始めることができたのは7月上旬になってからだった。
創成科学研究科修士2年の藤原望恵(もえ)さん(25)は始動が1カ月遅れた焦りを感じながらも、「この連を来年以降にもつなげなければ」と、研究の合間を縫って後輩たちに踊りのフォーメーションなどを伝えてきた。
3年前、「せっかく岡山から徳島大に来たのだから阿波踊りをやってみよう」と参加。鳴り物の生の演奏に合わせて踊ることが新鮮だった。「ふだん忙しくてあまり話せない友人や先輩後輩など、関わりのないまま卒業していたかもしれない人たちと、親しくなれる良い機会」とも感じた。後輩たちにもそんな経験を積んでほしいと願っている。
ほかの学生連も、真夏の屋外での阿波踊りを知らない学生が多いという事情は同じ。過去の映像を見返したり、数少ない経験者に教えを請うたりしながら、準備を重ねている。(東孝司)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル