「踊る阿呆(あほう)に見る阿呆」で知られる徳島市の阿波踊りが2年ぶりに復活した。市内のあわぎんホールで13日から、例年の「本番」にあたる「選抜阿波おどり」が始まり、人気踊り手グループの有名連などが出場。三味線や太鼓などの鳴り物が奏でる二拍子のリズムがホールに響き、ライトを浴びた踊り手たちが舞台上で乱舞した。
昨夏、新型コロナウイルスの影響で戦後初めて中止となったが、主催する市は今夏、「伝統の継承」を掲げて開催に踏み切った。
ただ、市は屋外の有料演舞場の設置を断念。屋外開催の場合、会場周辺に県内外から多くの観光客が集まるため、観客や踊り手らの感染防止対策が難しくなる恐れがあったためだ。
踊り手も観客も県内に限定し、屋内会場の開催なら人流を抑え雑踏など3密発生を極力排除できると市は考えた。日程も短縮した。
舞台上で踊り手同士は間隔を空けて掛け声もできるだけ控え、観客はマスクを着け静かに観覧。例年なら多くの観光客でにぎわう街中だが、今夏は会場内だけが熱気に包まれた。
阿波踊りは15日、市内の陸上競技場で無観客で開かれるグランドフィナーレで幕を閉じる。(伊藤稔)
「やりきった。すがす
がしい気持ちです」。13日の選抜阿波おどりでトップを切って演舞を披露した、徳島県立城西高校(徳島市)の阿波踊り部の小西真幸部長(17)=3年=は、安堵(あんど)した様子で話した。
城西高の生徒たちは毎年、阿波踊りに参加してきた。それが昨夏は中止となり、演舞を披露する機会がほとんどなくなった。
今年4月、今夏の阿波踊りに参加する意向の有無を問い合わせる市のアンケートが学校に届いた。3年生にとって最後の晴れ舞台。新型コロナの影響で、自宅に小さなきょうだいがいたり、体調に不安を抱えたりして辞退する生徒もいたが、部としては参加する方向で意見がまとまった。
だが感染の収束が見通せない中、主催する徳島市は6月末、有名連だけが出場できる屋内会場のみでの開催方針を明らかに。
「大舞台で踊りたい」という生徒たちの願いは、2年連続でかなわないかと思われたが、徳島市は7月、選抜阿波おどりに学生連の特別出演枠を設ける「救済策」を発表。市内の大学、高校から4連が出演できることになった。この日、演舞を終えた生徒たちは「ありがとうございました」と大きな声で一礼して舞台を下りた。
生徒たちは練習の時から感染対策を徹底。検温やマスクの着用、道具の消毒などを欠かさなかった。本番でも踊り手同士はいつもより離れて、掛け声もできるだけ控えた。
阿波踊り部OBで、顧問の仁志みのり教諭(24)は「出場できないと知ったときは、生徒もモチベーションが下がりすごくつらかった。普通の連だと今年なくても来年がある。でも高校3年生にとってはラストチャンス。頑張ってきた成果を見せる機会ができてすごくよかった」と話した。(伊藤稔)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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