天皇陛下は23日、国立競技場(東京都新宿区)で開かれた東京五輪開会式に出席し、開会宣言で「私は、ここに、第32回近代オリンピアードを記念する、東京大会の開会を宣言します」と述べた。1964年の東京五輪で昭和天皇が「オリンピアードを祝い」と宣言したのに対し、今大会では「記念する」と表現を変えた。
開会宣言は国際オリンピック委員会(IOC)の五輪憲章で、英語と仏語で文章が定められている。日本語の表現が変わった部分は英語では「celebrating」で、日本オリンピック委員会(JOC)が公開している「五輪憲章2020年版・英和対訳」では「祝い」とされている。
同時に、この冒頭には「英文が原本となります。本憲章の英文と和文に差異がある場合には、英文が優先されます」との注意書きもある。celebratingの今回の訳についてJOCは「論評できない」としている。
過去、ブッシュ大統領の宣言には批判
五輪憲章は開会式の進行を細部まで定めており、宣言の言葉もその一つだ。式典が政治的に利用されることを避けるためとされている。2002年2月のソルトレーク冬季五輪の開会式で宣言したジョージ・W・ブッシュ米大統領は五輪憲章で定められた文章に「誇り高く感謝の気持ちを忘れない米国民を代表して」と付け加え、米国の愛国心に訴えかけるようだと批判された。
また、宣言が英語と仏語以外で行われるのは珍しくない。64年大会で昭和天皇が日本語で宣言したほか、36年ベルリン大会ではドイツ語、60年ローマ大会ではイタリア語、92年バルセロナ大会ではスペイン語で宣言されている。
IOCによると、国家元首が五輪の開会宣言を担当するよう五輪憲章に定められたのは1921年からだという。大会組織委員会の会長が国家元首を招くと定義され、開会宣言の文言が英語と仏語で記された。
1958年には五輪憲章を改定し、国家元首を招待するのは大会組織委の会長ではなく、IOC会長となった。
ただ、五輪憲章が定められる前にも開会宣言はあったという。1896年、第1回大会の開会を宣言したのは、ギリシャ国王ゲオルギオス1世だった。大会の公式報告書によれば、ゲオルギオス1世は宣言にあたり「私はアテネで開催する最初の国際オリンピック大会の開会を宣言します。国よ、永遠なれ、ギリシャの人々よ、永遠なれ」と発したという。(遠田寛生、塩谷耕吾)
I declare open the Games of … (name of the host) celebrating the … (number of the Olympiad) … Olympiad of the modern era.
「わたしは、第○回近代オリンピアードを祝い、○(開催地)オリンピック競技大会の開会を宣言します」
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル