渡辺七海
奈良県香芝市の青木恒子市議(共産)が、自身の発言をめぐり「市議会から出席停止処分を受ける可能性がある」として、市を相手取り、処分をしないよう求めた仮処分申し立てについて、奈良地裁(寺本佳子裁判長)が市議の訴えを認め、処分を差し止める決定をした。市議の代理人弁護士が2日、明らかにした。
決定などによると、市議会福祉教育委員会で昨年12月、川田裕議長が、国民健康保険窓口などを訪れる市民に議員が同行することは禁じられているという趣旨の発言をした。青木市議は「政治倫理条例の何条に入ってるんでしょうか、議長」と発言。休憩が宣言された後も「議員に対する圧力だというふうに私は今、感じました」「パワハラのように聞こえた」などと述べた。
こうした青木市議の発言について、別の市議らから「議長に対し、公然と誹謗(ひぼう)中傷したと受け止められるおそれのある発言だ」などとして懲罰動議が出され、懲罰として議場で陳謝文を朗読するよう求められた。「内心の自由に反する内容だ」として拒んだところ、その後も3回、朗読を求められ、いずれも拒否した。
市議会懲罰特別委員会は今年8月、4回目の朗読拒否は「8日間の出席停止にあたる」と決定。9月5日の本会議で懲罰動議が審理される予定だったため、処分の差し止めを求めていた。
決定は、陳謝文のうち、それまでの経緯を記した部分について、青木市議の評価とは異なる表現が含まれており「内心の自由に関わる」と指摘。市議会の規則では「陳謝は議会の決めた陳謝文によって行う」と定められているため、一部のみを朗読する選択肢はなく、拒否したことは「やむを得ない側面がある」とし、出席停止処分は市議会の裁量権の範囲を超えると結論づけた。
青木市議は2日、記者会見し「懲罰が見せしめのようになり、議員が自由に発言できなくなるのは問題だ」と強調。代理人の宮尾耕二弁護士は「多数派の力に任せた横暴に警鐘をならす結果だ」と評価した。
川田議長は「内容を精査できておらず、現時点で詳細なコメントはできない」とするコメントを出した。(渡辺七海)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル