筋ジストロフィーの重度障害者と介助ボランティアの奮闘を描き、大泉洋さん主演で話題となった映画「こんな夜更けにバナナかよ」(2018年)。ノンフィクションの原作を手がけ、取材者・介助者として、主人公の障害者と向き合った渡辺一史さん(54)は「障害のある人たちの存在が、逆に社会を助けてくれている」と感じた。
渡辺さんに取材者・介助者として感じたことを語ってもらいました。
「バナナかよ」の主人公の故・鹿野靖明さんと出会ったのは、22年前のことです。当時は、今より在宅介護の制度が未整備な時代で、重度障害者が地域で生きるには、ボランティアの存在が不可欠でした。鹿野さんとボランティアの交流をテーマに本を書かないかと、編集者に勧められ、取材を始めました。
衝突や葛藤は絶えず
メディアで描かれがちな「感動ドラマ」とは全く違った世界でした。鹿野さんはとにかく自己主張が強く、介助者に「あれしろ、これしろ」と容赦なく要求を繰り出す。ボランティアも「善意の人」というイメージとは違い、人生に悩みを抱える普通の若者たちで、鹿野さんとの衝突や葛藤は絶えませんでした。
映画で、ボランティア役の高畑充希さんが、大泉さん演じる鹿野さんに、「障害者って何様なの?」と感情をぶつけるシーンがありますが、まさにそんな感じです。でも大切なのは、そう思っている自分こそ「何様?」と突き付けられる場面が多いことです。
1日24時間の介助が不可欠なので、常にボランティア不足。私も取材しているうちにローテーションに組み込まれていきました。泊まり介助の時に、深夜に腹をすかせた鹿野さんから「そうめん作って」と言われたことがあります。
めんをゆでて、つゆを水で薄…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル