新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、全国高校野球選手権大会や全国高校総合体育大会(インターハイ)などが相次ぎ中止となる中、滋賀県の高校生が自分たちでコンテストを企画したり、オンライン新聞を発行したりするなど、「活躍の舞台」を用意する動きが広がっている。「コロナに奪われた『集大成』を取り戻したい」と生徒たちの奮闘が続く。
■乗り越えて
「全国の中高生よ、コロナに挑め」-。立命館守山高校(滋賀県守山市)の生徒3人でつくるグループ「GENIE(ジーニー)」は、「ビヨンド・コロナ・コンテスト」と題したコンテストを開催している。休校期間中にできることや、新たに得た学びを全国の中高生から募集し、発信する取り組みで、コロナを「ビヨンド(乗り越える)」という願いが込められている。
ジーニー代表の3年、富岡大貴さん(17)は「甲子園やインターハイ、海外研修といった『集大成』を奪われた同級生の姿を目の当たりにしたことが、コンテスト開催のきっかけになった」と説明する。
富岡さんも活躍の場を失った生徒の一人だ。ジーニーは昨年度開催された国内最大の高校生ビジネスコンテスト「キャリア甲子園2019」に出場。全国1090チームの中から決勝大会に進出する7チームに選ばれたが、感染拡大の影響で決勝は中止になってしまった。
やりきれない思いが募る中、自分たちのようにエネルギーのやり場を失ってしまった同級生を思って企画したのが「ビヨンド・コロナ・コンテスト」だった。
コンテストは企画からホームページまで全てジーニーのメンバーの手作り。ジャンルを問わず新しいことに挑戦する「チャレンジ」部門、感染拡大による経済停滞で生じる食品ロスを解決するメニューなどのアイデアを募る「ゴハン」部門、医療従事者などへエールを送る「オウエン」部門の計3部門で実施している。
無料通話アプリLINE(ライン)の公式アカウントを通じて応募。31日まで受け付けており、応募回数に制限はない。すでに筋トレやパズル、フェースシールド製作など、ユニークなアイデアが数多く寄せられているといい、富岡さんは「中高生でもできることがある。気軽にやってみてほしい」と呼び掛けている。
■不安を軽く
一方、企業のようにテレワークで活動を続けているのが、滋賀県立彦根東高校(同県彦根市)の新聞部だ。
同部は全国高校新聞年間紙面審査賞で12年連続で最優秀賞を受賞。例年なら3年生は、これまでの集大成として3月に福島県を取材旅行に訪れ、被災地の現状を特別紙面にまとめて引退することになっている。
今年は同校の校歌を作曲したNHK連続テレビ小説「エール」のモデル、古関裕而氏の資料館や聖火リレーのスタート地点などを取材する予定だったといい、記事の企画を担当する編集長で3年の宮下晶さん(17)は「例年以上に期待していた」と話す。
しかし、感染拡大で取材旅行は断念。臨時休校などで同級生に会えない日々が続く中、「同じ生徒目線で情報をとどけることで少しでも不安を軽くできたら」との思いから、電子版の速報「キマグレ」で新聞の発行を続けることにした。
部員たちはビデオ会議アプリ「Zoom(ズーム)」で遠隔編集会議を開き、各自宅で記事を執筆。教員が学校で編集してホームページで公開している。
20本近く公開した記事では、在校生用のウェブページで実施した休校に対する意識調査や、9月入学の是非を問うアンケート、在校生・OBの大学生の休校中の過ごし方などを紹介。宮下さんは「取材も電話が中心で、やりづらかったが、伝えること、共感することの重要さに改めて気付けた」と手応えを口にする。
6月からは授業が再開され、部室には生徒の姿が戻る。本来ならすでに引退している時期だが、しばらく活動を続けるという宮下さん。「他の部活の3年生も集大成が奪われた。そんな生徒たちの思い出を作れるような企画を新聞部で行い、私自身の集大成にもしたい」と意気込んでいる。(花輪理徳)
Source : 国内 – Yahoo!ニュース