地震や大雨による土砂崩れで道路が寸断され、山間部の集落が孤立することがある。長期化すると住民の命にも関わる問題だ。過去の災害の教訓を生かし、行政と住民が対策に乗り出している。
「防災力の強化と言われても、災害時に動ける人がいなければ絵に描いた餅だ」
急斜面のふもとの集落で住民男性(69)はつぶやいた。2020年7月の豪雨で、岐阜県内の各地で河川の氾濫(はんらん)や土砂崩れが起きた。男性が住む下呂市小坂町長瀬地区は土石流に襲われ、一時孤立した。
あれから2年。「早めに避難」の意識は強まったと感じる。だが一人暮らしや体の不自由な高齢者も多い。地区内に商店はなく、孤立が長期化すれば食料や物資不足も心配だ。
長瀬地区には約330人が暮らす。自主防災組織があり、20年の豪雨後に備蓄を買い増すなどしてきた。孤立を防ぐため、サイクリングロードの幅を広げて車両が通れる迂回(うかい)路にすることも市に要望した。
だが、平均年齢は59・6歳で、限界集落(人口の50%以上が65歳以上)に近づいている。高齢化で消防団員は減り、コロナ禍で防災訓練もできていない。災害時に住民同士が助け合うことができるのか。男性は「自分が逃げるので精いっぱい。いつまた孤立してもおかしくない」と不安を感じている。
防災力「2年前と変わらぬ」
区長の石丸茂夫さん(70)…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル