食べるスープの専門店「Soup Stock Tokyo(スープストックトーキョー)」が4月、離乳食を全店で、無料で提供すると発表したところ、ネット上で賛否の議論になった。松尾真継(さねつぐ)社長(46)は「これほどの反響は想定外だった」と振り返る。
離乳食の無料提供は、6店舗で2020年から始めた。好評だったため今年4月18日、「25日から全店で提供する」と発表した。ツイッター上で「素晴らしい取り組み」という肯定的な声の一方、「おひとり様を大事にしないのか」など否定的な声もあがり、一時はトレンド入りするほどの議論が起きた。
同社は25日、予定どおり離乳食の提供を始め、翌26日に公式サイトに声明文を発表。「私たちは、お客様を年齢や性別、お子さま連れかどうかで区別をし、ある特定のお客様だけを優遇するような考えはありません。私たちは、私たちのスープやサービスに価値を見出していただけるすべての方々の体温をあげていきたいと心から願っています」などと記した。
すると、公式サイトには1日で170万アクセスがあった。サーバーが一時ダウンするほどだったという。「安易な謝罪をせず、理念を貫いた」などの声もあがった。
離乳食を無料で提供するのは悪いことなのか? 誰かを傷つけることなのか? そうではないだろう――。騒動後に殺到した取材依頼を断り、今回の取り組みへの思いは自分たちの言葉で伝えたかった、と松尾さんは振り返る。
声明文に記載したように、赤ちゃんや親子連れをとくに重視したわけではないという。
「スープは誰にとっても食べやすい、優しい食べ物」と松尾さん。赤ちゃんの離乳食もお年寄りの介護食や流動食も、どちらもスープに近い、と考えているという。
「同じ食卓をみんなで囲めるようにしたい。食のバリアフリーを進め、宗教上食べられないものがある人、アレルギーのある人、病気の人も、それぞれに合ったスープで、同じ食卓につけるようにすることをめざしています」
今後は、介護食や減塩食などの研究・開発も手がけたいという。(大坪実佳子)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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