村上友里、阿部峻介
離婚や相続などのトラブルを話し合いで解決させる裁判所の「家事調停」のオンライン化が今月中旬以降、東京、大阪、名古屋、福岡の4家裁で試験的に始まる。当事者が赴く手間や負担を省き、早期解決につなげようとの取り組みだ。
家事調停は、家庭問題について裁判官と民間の調停委員が当事者と話し合う非公開の手続き。離婚や養育費の変更など年約13万件が扱われ、合意内容は判決と同じ効力を持つ。
2日には東京家裁で、ウェブを使った模擬調停の様子が報道機関に公開された。調停委員役の2人がパソコンの画面越しに「離婚を希望する理由を詳しく教えてもらえますか」と妻役に尋ねたり、ウェブカメラで部屋全体を映させて関係者以外の人がいないかを確認したりした。
家事調停のオンライン化が進めば、仕事や育児を抱える1人親や遠隔地に住む人が対応しやすくなり、家庭内暴力などを理由に相手と会いたくないケースにも対処できる。
専門家、リアルとオンラインの使い分けが必要
ただ、画面上のやりとりで調停委員と当事者が信頼関係を築けるかという課題もある。元家裁判事の梶村太市弁護士は取材に、「家事調停では双方の意見をじっくり聞き、互いに納得して終えることが望ましい。迅速化の考えが強く出すぎても問題だが、親権や養育費の事案などでは速さが求められる場合もあり、使い分けが必要だ」と指摘する。
最高裁の担当者は「本格導入の時期は未定」としつつ、「ニーズに合っているとわかれば全国展開を検討したい」と話している。
民事裁判のIT化では、昨年2月から争点整理などの非公開審理がウェブ会議で行われ、全国の地裁に広がっている。刑事裁判では、令状請求のオンライン化や証拠の電子化などについて、法務省が今年3月に検討会を設置した。(村上友里、阿部峻介)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル