鈴木優香
小雨がパラパラと降りしきる夜。30代くらいの女性が、福岡県糸島市内の踏切の中に、傘もささずにたたずんでいた。
10月9日。サッカーの試合帰りだった中学2年、谷口光輝(ひかる)さん(14)は、母の祥子さん(39)が運転する車で通りかかり、その女性に気づいた。
一緒に乗っていた友人を送り届けた後、女性のことが気になった。5分ほどたっていた。戻ると、女性はまだそこにいた。
祥子さんが糸島署に電話をかける。遮断機が下り始めた。カンカンカン。辺りに警報機の音が鳴り響く。
光輝さんは遮断機をくぐり、女性に駆け寄った。「危ないですよ」と声をかけ、服をつかんで引っ張った。踏切の外へ。直後、列車が通り抜けていった。
署員が到着するまで女性の背中をさすり、「大丈夫ですか?」と声をかけ続けた。「ごめんなさい。ありがとうございます」。女性は泣いていた。
11月18日、谷口さん親子に署から感謝状が贈られた。光輝さんは「助けようという思いだけだった。どんなことがあっても命を大切にしてほしい」と話した。(鈴木優香)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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