震災で消えた、地酒が復活した。岩手県大槌町の豊富な地下水と町産の米でつくった純米吟醸酒が19日、新発売された。その名も「源水」。販売地域限定の「地域おこし酒」として、交流人口拡大の「呼び水」にと関係者は期待をかけている。
銘柄の名前の「源水」は大槌川の支流「源水川」がある地区名からとった。源水川には希少種の魚・イトヨが生息するほどのきれいな水が流れる。ラベルには源水川に生息する水草「梅花藻(ばいかも)」をデザインした。
震災前、町には「浜娘」をつくっていた「赤武酒造」があったが、津波で酒蔵が壊滅。盛岡市に移転して以来、地酒がなかった。
今回、新たな酒を発売したのは、町に隣接する釜石市の酒造会社「浜千鳥」。同社が20年前から町産米も使って酒をつくっている縁で、町内で地域資源の掘り起こしをしている株式会社「ソーシャル・ネイチャー・ワークス」が地酒づくりを提案した。地区の地下40メートルからくみ上げたきれいな水で仕込んだのが特徴だ。
杜氏(とうじ)の奥村康太郎さん(42)によると、地区の地下水はミネラル成分のバランスがよく、発酵に適しているという。甘みに適度な酸味もあり、さらりとした後味で、地元産の魚やジビエ肉に合うという。
発売初日の19日には町のショッピングセンター「マスト」で試飲会が開かれ、町民が長い列をつくった。試飲した大槌町吉里吉里の佐野智則さん(26)は「なめらかで飲みやすい酒。ふるさとの味ができてうれしい」と買って帰った。
今年は1・8リットル(税込み3344円)700本と、720ミリリットル900本(同1672円)を限定販売。大槌町と釜石市内の酒店や宿泊施設、飲食店、ふるさと納税の返礼品でのみ販売・提供する。(東野真和)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル