2011年3月12日、昼下がり。還暦を過ぎた男性は福島県川内村の自宅8畳間で一人、テレビのニュースを見ていた。前日の大きな揺れで壁には亀裂が入っていた。
インターホンが鳴った。こたつから腰を上げ、玄関の引き戸を開けると、2人の少年が立っていた。
「携帯がつながらなくて。電話を貸してもらえませんか」
すぐに台所から子機を持ち出した。
「好きなだけ使ってください」
夕方、こんどは別の少年たちが来た。「どうぞどうぞ」と子機を渡した。
丸一日経っても、隣町の施設にいる、米寿の母の安否がわからないままだった。自宅から20キロ東にある東京電力福島第一原発が爆発した。14日も、15日も。家の電話もつながらなくなった。
その日午後、防災無線から村長…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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