震災12年 伊東豊雄さんの建築論 自然との関係・公共性のあり方

 現代の建築はどうあるべきか、その公共性とは何か――。東日本大震災以降、建築家の伊東豊雄さん(81)はこう問い続けてきた。被災者のための集会施設が昨秋再建され、今年開館する水戸市民会館でも同じ課題を設計に託した。震災から間もなく12年、その思いを聞いた。

 甚大な津波被害があった岩手県陸前高田市で昨年、かさ上げされた新市街地の一角に杉の丸太約20本が支える土俗的で縄文的な建物が現れた。再建された集会施設「みんなの家」だ。

 この「家」は伊東さんらの呼びかけに基づき、東北各県の被災地の仮設住宅群などに気鋭の建築家の設計でつくられた集会施設だ。陸前高田では伊東さんと、乾久美子さん、平田晃久さん、藤本壮介さんの3人が共同で設計を手掛けた。

 波をかぶって立ち枯れした杉の丸太を再生させるように、被災した街が見渡せる場所に建ち上がる過程は、2012年のベネチア・ビエンナーレ国際建築展(イタリア)で紹介され最高賞を受けた。

 しかしこの「家」が立つ敷地もかさ上げ対象となったためいったん解体され、現在の場所に再建されたのだった。周囲には現代的でぴかぴかのスーパーやホールが並ぶ。伊東さんは「新しい建物に囲まれ、『みんなの家』の灰色に変色した丸太が年代を感じさせます。この土地の下にかつて街があったことを示すモニュメントとなったし、近代化された復興計画へのアンチテーゼとしてのメッセージもあると思う」と話す。

 震災以前から、自然と隔絶し…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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