「ブラック霞が関」
先週から永田町周辺では、行政改革担当相の河野太郎さんがつづったブログが話題になっています。 中央省庁に務める総合職の国家公務員で、「自己都合」で退職する20代が87人に上り、安倍政権の6年間で4倍以上に増えているデータを明らかにしたからです。 「危機に直面する霞ケ関」と題したブログには、「すでに辞める準備中」「1年以内に辞めたい」「3年程度のうちに辞めたい」と考えている30歳未満の国家公務員が男性で15%、女性で10%、という数字も紹介されています。 働き方改革のなかで職員の期待が高いものの実施度が低いものとしては、「国会関係業務の効率化」が真っ先に記されていました。 いま、河野さんの指示で、各省庁の職員が職場にいた時間を示す「在庁時間」の調査が全省庁で行われています。 「労働時間」ではなく、「在庁時間」としたところがポイントです。 霞ケ関では、残業代に限りがあるため、それを超える部分は、組織命令による残業ではないことにして取り繕ってきました。このため、「労働時間」として調べると、違法なサービス残業を隠そうとして実態が見えてこないので、「在庁時間」としているのです。 時を同じくして書店に並んだのは、元厚生労働省のキャリア官僚だった千正康裕さんが出版した『ブラック霞ケ関』(新潮新書)です。 帯には、「07:00仕事開始 27:20退庁『このままでは国民のために働けない』」。 官邸主導や政権交代を前提にした政治に変わるなかで、霞ケ関の官僚たちに与野党の双方から大きな負担がかかり、「加速度的に忙しくなってきた」という実態を紹介しています。 この本のなかでも「最も負荷が大きい」と指摘しているのが、国会対応です。 千正さんは、野党合同ヒアリングを例に、「野党が必要とする回答や情報を政府が出さないから、より追及が激しくなるというケースもあると思うし、政府は説明責任を果たすべきだとも思う。ただ、官僚の判断で勝手に野党に新しい回答をすることは許されていない」「政策がテーマなら詳しい官僚が出て行って説明すればよいが、森友学園、加計学園、桜を見る会の問題などは政権の姿勢を追及する話なのだから、政治家同士で議論すべきと思う」と記しています。 厚労省の中核を担ってきた千正さんは昨年9月、18年半務めた厚労省を退職しました。 「官僚の疲弊の背景にあるものは、ブラックな労働環境に加えて、積み上げてきた政策の知見が活かされず、上から突如降ってきた政策の実現に奔走するようになり、答えようのない追及に対する説明に追われる虚しさです。それだけで精一杯になり、政策を考える時間も政策のネタをつかむために現場を見る時間も取れなくなってしまいます」 職場に残る後輩のため、そして国民のために、負のスパイラルを止めなければいけないと訴える千正さんのメッセージには胸に詰まるものがあります。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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