大阪市北区の雑居ビル4階のクリニックで17日に発生した放火殺人事件で、クリニックの消火栓の扉や同じ階の非常扉に、開きにくくなるような工作が加えられていたことが捜査関係者への取材でわかった。容疑者の男の住宅から「消火栓をぬる」「放火殺人」と記したメモが見つかり、大阪府警は工作に男が関与した可能性があるとみている。
殺人などの疑いが持たれているのは住所、職業不詳の谷本盛雄容疑者(61)。
捜査関係者によると、事件後の現場検証で、クリニック内にある消火栓の開き扉の隙間に何かが塗られていたことが判明。また、4階の非常階段につづく扉が外側から粘着テープで目張りされていることにクリニックの院長が気づき、事件当日の朝に妻に伝えていたこともわかったという。
府警は、谷本容疑者が事件当時滞在していた大阪市西淀川区の3階建て住宅を家宅捜索し、「消火栓をぬる」などと記した手書きのメモを発見。クリニックで見つかった異状とメモの内容が重なるため、谷本容疑者が工作に関わった可能性があるとみている。火災時の避難経路を塞いだり、消火しにくくしたりした疑いがある。
室内の防犯カメラには事件時、逃げようと出入り口に向かう人の腕を谷本容疑者がつかもうとする様子が映っていたことも判明。多くの被害者を出すことを狙って計画的に放火したとみて調べる。
西淀川区の住宅からは、2019年の「京都アニメーション」放火殺人事件から2年になることに関する今年7月の新聞記事に加え、今年3月に徳島市で発生したアイドルライブ会場の雑居ビルでの放火事件を伝える記事も見つかった。これらの事件ではガソリンが使われた。
谷本容疑者が直近でこの住宅で生活していたのは1カ月間程度といい、これらの記事を持ち込んだ可能性がある。府警は、谷本容疑者が京アニ事件など過去の事件に強い関心を持ち、手口を模倣した恐れがあるとみている。
谷本容疑者は11月下旬、ガソリン約10リットルを住宅近くのガソリンスタンドで買っていたが、購入履歴から、使用目的について「バイクに使う」「トーチランプに入れる」などと申告していたことが分かった。バイクを所有していた形跡はなく、虚偽の説明でガソリンを入手した疑いがある。
この住宅から府警は液体の入った容量約2リットルの容器も発見、押収した。ガソリンとみて調べる。府警は、谷本容疑者が購入した約10リットルを分け、ビル火災当日はガソリン入り容器を紙袋に入れ、自転車に積んで運んだとみている。
府警によると、二つの火災現場からは油分が検出された。鑑定でガソリンの可能性が高いという。
府警は21日、事件で意識不明になっていた20代とみられる女性が死亡したと発表した。事件の死者は25人になった。
谷本容疑者はビル火災現場から救急搬送され、重度の一酸化炭素中毒などで重篤な状態が続いている。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
Leave a Comment