2020年東京五輪・パラリンピックの余波で、来年夏を中心としたイベントに異変が生じている。日程の組み直しや規模縮小のほか、中止も相次ぐ。競技が開かれる会場を使用できなかったり、警備員や移動手段の確保が難しくなったりして変更を余儀なくされたためだ。
夏恒例の一大音楽イベント「サマーソニック」は来年、中止となることが決まった。
毎年8月上旬や中旬に開催され、メイン会場となる幕張メッセ(千葉市)には10万人を超える観客が押し寄せる。今年はYUKIやレッド・ホット・チリ・ペッパーズ、ザ・チェインスモーカーズなど国内外の有名アーティストが多数、出演した。
来年は五輪が7月24日~8月9日、パラリンピックが8月25日~9月6日に開催され、幕張メッセはレスリングやフェンシングの会場として使われる。
他のイベントで使用できなくなり、サマーソニックも中止の憂き目に。「五輪では海外からも観光客が訪れるので、この種のイベントも楽しんでもらえたらよかったのに…」。サマーソニックを毎年楽しみにしているという東京都内の30代の女性は残念がる。
毎年100万人前後が訪れる東京の夏の風物詩「隅田川花火大会」も、来年の日程は2週間前倒しして7月11日に変更。大会期間中は警備員の確保が難しく、交通の混乱も予想されることから、首都圏の別の花火大会も5月~7月上旬に相次いで組み直している。
こうしたイベントに五輪の影響が及ぶ背景には、国際オリンピック委員会(IOC)と都、日本オリンピック委員会(JOC)の三者で締結した「開催都市契約」がある。事前承認なしに大会期間中とその前後1週間に大規模イベントを開催することが契約で禁じられているのだ。
各競技会場の運用も変更を強いられている。
プレスセンターなどが置かれる東京ビッグサイト(東京都江東区)は一部展示棟が既に閉鎖され、食品、車といったさまざまな「見本市」が開けない事態に陥っている。
柔道や空手の会場となる日本武道館(千代田区)も大会に備えた改修などを行い、五輪・パラ終了までは一般の利用が停止されている。
最大1万4千人を収容できる武道館では、コンサートや柔剣道大会のほか、周辺大学の入学、卒業式にも利用されてきた。今年4月には9大学が入学式に利用した。
今年は各大学が変更を余儀なくされ、うち法政大は来春の入学、卒業式を両国国技館(墨田区)での開催に。国技館の最大収容数は1万1千人で、大学側は付添人数を1学生につき1人に制限した。東洋大も来春の入学、卒業式をキャンパスごとに分散して行う。
一方、五輪のマラソンや競歩の開催地に急遽(きゅうきょ)決まった札幌市では、大通公園での夏恒例のビアガーデンの開催可否に注目が集まる。
五輪会場の運営に詳しい「国際メディアサービスシステム研究所」の広谷徹代表は「イベントや展示会は日本の伝統や技術をPRする重要な機会。外国人が多く来日する五輪期間中に開催できないのは大きな痛手だろう」と話している。(大渡美咲)
Source : 国内 – Yahoo!ニュース