【後編】亀田誠治に聞く日比谷音楽祭の未来像、“アフターコロナ”の音楽界
音楽プロデューサーでベーシストの亀田誠治が、昨年、東京都心の日比谷公園を会場に、「フリーで誰もが参加できる、ボーダーレスな音楽祭」を掲げる「日比谷音楽祭」のプロジェクトを発足。しかし、新型コロナウイルスの影響で、第2回を予定していた今年の開催は中止という苦渋の決断を下した。“親子孫3世代を通じて愛される音楽”と持続可能な音楽産業の新たな道を追求する音楽職人に、日比谷音楽祭が描く未来像と、コロナによって変わる音楽の形について聞いた。今回は後編。
――日比谷音楽祭は「人命最優先」で中止の決断に至りました。他方で、今回、この日比谷音楽祭には総勢600人のスタッフが関わっていました。このイベントの中止により仕事がなくなった裏方のスタッフへの補償をクラウドファンディングで集める取り組みを実施しています。第1目標の支援総額400万円を達成し、スタッフ一人あたり1万円の補償金の用意が決定。現在も支援総額800万円というセカンドゴールに向けて継続しており、先日新たに追加リターンの提供を発表しています。
「日比谷音楽祭はフリーイベントですが、アーティストだけでなく、スタッフもトップランナーの方を集めているんです。全国でコンサートや演劇、舞台が止まっている現状の中で、普段はトップアーティストのコンサートをサポートするスタッフであっても、2か月以上も収入が断たれてアルバイトを始めている人もいます。プロフェッショナルが職業を失うことは避けたい。日比谷音楽祭として届けたいのは、音楽・エンタメ界のピンチと窮状、それだけを訴えるのではなく、その先のことも伝えたいんです。コンサートの裏方には、照明さん、PAさん、舞台監督、ローディーさん、当日の会場警備からお弁当手配まで様々な仕事をこなす運営スタッフもいます。こういう方々が華やかなステージを支えているんです。日比谷音楽祭を始め、エンターテインメントは何百人ものプロフェッショナルが何百日もかけて作り上げる『総合芸術である』ということを分かってほしい、それが今回のクラウドファンディングの目的の一つです。スタッフ一人ひとりに行き渡るお金は少額になるかもしれませんが、まず支援してくださったみなさんの気持ちが届き、スタッフが受け取ります。コロナ禍の先に音楽業界がよりよくなっていくために、今ある僕らの状態、業界の仕組みをなるべくわかりやすく、たくさんの人に知ってもらおうという狙いがあります」
――コロナ前と後での音楽の在り方についてです。これからの音楽制作は変化していくのでしょうか。
「まず、今日も僕たちはオンラインでこの取材を行っていますよね。今はもうこのビデオ通話が当たり前になりました。コミュニケーションの手段で言えば、人と人が会えないことによって在り方が変わりました。当然音楽はコミュニケーションによって築かれるものですから、作り方も変わっていくと思います。何を隠そう、この亀田誠治も半年前までは、音楽というものは、人と人がスタジオで一緒に音を鳴らして語り合って、フェイス・トゥ・フェイスで作り合う。ステージから流れる音をみんなが歓声を持って受け止めて、その歓声をステージ上の僕らがキャッチする、そのエネルギー交換、それが音楽でしょ、と思っていました。そんな僕がいま、すべての音楽制作をオンラインのデータ交換で行っているんです。すべてのミーティングもオンラインでやっています。『音楽とは生身の人間のぶつかり合いだ!』という信念で30年間やってきた僕ですらも、コロナ禍を経ることによって、平気で変われちゃったんですよ。SNS世代の若い人たちは、きっとこの時代を乗り越えていくだろうし、このコロナの時期を経て生まれる音楽の新しい作られ方はきっとスタンダードになっていくと思います」
――フェイス・トゥ・フェイスで音を鳴らすことができないのは、寂しくないですか?
「それは一緒に演奏できたら楽しいという思いもありますよ。それは時間が解決してくれると思っています。コロナの第2、第3の波が来るかもしれません。でも、きっと特効薬ができる、ワクチンができる。『終息』がどういう形になるかはわかりませんが、そういう日が近い将来にやってくると思っています。それに、オンラインが100パーセントではないとも思っています。今までのやり方ももちろん残るでしょうし、ハイブリッドな形で進んでいくのではないかと考えています。
オンラインを駆使した新しい音楽の表現に対して確信を持つことが大事だと考えてます。僕が揺らいでいたらダメです。若手に対して、『それオンラインで作ったの?最高だね!』と言えること。そのために自分自身がオンラインで作ること、オンラインのコミュニケーションに向き合って自分のものにしていかないと。それに僕よりも先輩のアーティストの方々から、『亀ちゃん、オンラインってどうなのかな?ライブできるのかな?』と相談された時に、『心配いりませんよ!ライブもできますよ!』と言える状況を作っていく。それが自分の役割かなと思います」
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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