風刺とユーモア楽しんで 朝日新聞夕刊連載「ガリバー旅行記」原画展

阿部浩明

 朝日新聞夕刊に連載された「ガリバー旅行記」の挿絵を紹介する原画展が、北海道函館市石川町の函館蔦屋書店で開かれている。挿絵を制作した画家の平松麻さん(40)は「原作に込められた風刺やユーモアを、絵を見て自分ごととして体感してほしい」と話す。

 18世紀に刊行された「ガリバー旅行記」は、アイルランド出身の聖職者ジャーナリストのジョナサン・スウィフトが書いた風刺小説。今も世界中の子どもや大人に読み継がれている。本紙には翻訳家柴田元幸さんによる新訳が、2020年6月から約2年間にわたって全84回連載された。

 平松さんのふだんの創作活動は油彩が中心だが、ガリバーでは、質感を出す不透明な水彩絵の具「グワッシュ」の画法を採り入れ、小説の世界観の視覚化に挑戦した。英国から取り寄せた手すき紙を使い、当時の衣装や風俗などを調べ上げて精緻(せいち)に描き込むなど、立体感のある作品に仕上げた。

 スウィフトの名言「洞察力とは、見えないものを見る技術」を強く意識しながら制作したという。新聞紙面では一枚の絵のように見えた作品が実は立体的に表現されているなど、原画にはユニークな仕掛けや遊び心が施されている。

 平松さんは「小説のテーマでもある『常識や思い込みを疑う』『うそに惑わされない』といったメッセージを表現したかった。挿絵と原画を見比べて、いろんな仕掛けを楽しんでほしい」と話している。

 原画展は3月19日まで。入場無料。会場では、連載の挿絵を含む計100点を収めた画集『TRAVELOGUE G』(5500円、スイッチ・パブリッシング)を販売している。(阿部浩明)

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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