食べ物などをのどに詰まらせて窒息して亡くなる人は年間9千人を超える。息が止まれば一刻を争う。心肺蘇生と同じように、救命には、のどに詰まった異物をいかに早く取り除けるかが重要になる。
観光名所の浅草寺に近い浅草ビューホテル(東京都台東区)。昨秋の昼ごろ、1階ラウンジでサンドイッチを食べていた女性(84)がのどを詰まらせ、一緒にいた長女がフロントに助けを求めた。従業員はすぐに119番通報。総務課の赤澤健二マネージャー(36)が駆けつけた。
赤澤さんは救命講習の講師になれる応急手当普及員の資格を持ち、地域の消防団にも所属する。女性の顔は蒼白(そうはく)で、テーブルに突っ伏してのどから「くぅー」と音を出し、苦しんでいた。赤澤さんは長女に状況を聞きながら、のどに詰まった物を取り出すために、女性の背中の肩甲骨の間を手のひらの付け根で強くたたく「背部叩打(こうだ)法」を開始。続けて、腹部を手で圧迫する「腹部突き上げ法」を繰り返した。
救急隊到着前の気道確保を
だが、窒息はなおらず、女性は5分ほどすると意識を失った。全身の力が抜け、それまで固く閉じていた口の力が緩んだ。赤澤さんはすぐに手袋を付け、手を口の中に入れ、のどにへばりついていたパンのかけらを指でかき出した。女性の顔にみるみると血色が戻った。
119番通報から10分後、救急隊が到着。女性は隊員の声に受け答えできるほど回復していた。運ばれた医療機関で検査を受け、問題はなかったという。
年をとると、かむ力やのみ込む力が衰えて食べ物をのどに詰まらせるリスクが高まる。日本医科大病院など8施設のデータによると、気道が塞がっている状態が5分以内では死亡は6%。6~10分だと死亡または意識が戻らない状態が、合わせて42%に上った。
救急隊の現場到着時間は201…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル