愛知県内を中心に障害者グループホーム(GH)を全国展開する大手運営会社「恵」で発覚した食材費の過大徴収問題などを受け、名古屋市は障害福祉サービス事業者の指導や監査の強化、相談支援体制の充実を図る。関連費計1億8596万円を新年度一般会計当初予算案に盛り込んだ。障害者が安心して利用できるサービスを行政主導で確保することが、喫緊の課題となっている。
市は新年度から、障害福祉サービス事業所の運営を調べる実地指導や行政処分の疑いがある場合の監査に関わる職員を増員する。指導の関係書類の点検業務などを外部委託し、実地指導の件数増加や丁寧な指導につなげる。
背景には、指導対象となる障害福祉サービス事業所の増加などで、指導監査体制が追いつかない現状がある。厚生労働省の指針では、自治体による障害福祉サービス事業所への実地指導は、1事業所に対し、おおむね3年に1回実施する必要がある。
だが市内の事業所数は年々増加している。障害者支援課によると、ここ数年はコロナ禍も重なって指導件数が減り、3年に1回という厚労省の指針に達していない。コロナ禍前の1千件前後から2022年度は157件になっていた。
実地指導の強化は全国的な課題でもある。国の調査では、実地指導が必要な障害福祉サービス事業所数は15万3705(21年度)。だが実際の実地指導件数は1万5486件と、実施率は10%にとどまっている。これは1事業あたり10年に1度ペースで、指針を大きく下回っている。
市はさらに、障害福祉サービス事業所に対する苦情や虐待の疑いなどに関する外部委託の電話相談窓口を新たに設ける。市職員の電話対応の負担を軽減したり、虐待かどうか判断に迷った場合でも相談しやすくしたりするねらいがある。
虐待通報や障害福祉サービス支給決定の不服申し立てなどは、これまで通り区役所で受け付ける。
また各区の障害者基幹相談支援センターには、相談支援の中核を担う「地域連携コーディネーター」を新たに配置し、支援体制を強化する。
名古屋市には恵のGHが6事業所ある。そのうち5事業所で計約7168万円の食材費の過大徴収が確認されており、市は経済的虐待の疑いがあるとみて調べていた。(三宅梨紗子)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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