琵琶湖の北のはずれ、滋賀県長浜市に120年の歴史がある小さな私立図書館がある。
「江北(こほく)図書館」
開設から三度の引っ越しを経験し、現在の建物は、築85年の和洋折衷建築だ。ところどころ雨漏りし、2階の古い畳はすりきれてふかふかだ。
そんな図書館が今年、野間出版文化賞特別賞を受賞した。
受賞理由は「個人が設立して100年以上ものあいだ地域住民が運営を続けてきた、他に類を見ない私立図書館」。
確かに歴史はある。でも、数ある図書館のなかでいまなぜ江北図書館が注目され、受賞したのだろうか。
創立120年、建物は築85年
江北図書館の前身の杉野文庫は1902年、地元出身の弁護士杉野文彌さんが創設した。その5年後、地元の伊香郡の郡長や名士らが理事となり「財団法人江北図書館」が発足した。
館内閲覧は当初から無料で、まもなくデポジットを取った上での館外貸し出しや、近隣の小学校への「巡回図書」も始まった。
当時は篤志家や宗教法人による私立図書館の開館が相次ぎ、全国に100館以上あったが、実質無料で貸し出していたところは珍しかったという。
26年に郡役所制度が廃止され、32年には創設者の杉野さんが亡くなった。公的な支援や寄付金が途絶え、運営が厳しいなか、それでも太平洋戦争の戦禍をかろうじて生き延びた。
その後も簡単ではなかった。
戦後に制定された図書館法は私立図書館の独立性を守る意図で公的補助を禁止しているため、維持は公には頼れない。
どうやって120年も維持ができ、今後はどう生きていくか。図書館の試みを取材しました。
そこで江北図書館以外に図書…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル