政府が31日、海洋プラスチックごみ削減に向け意欲的な目標を掲げたのは、日本が削減に「後ろ向き」という国際社会の誤解を払拭し、6月に大阪で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)で、環境先進国として議論を主導する狙いがあるからだ。
「隗より始めよ。新たな汚染を生み出さない世界を目指してもらいたい」
安倍晋三首相は31日の関係閣僚会議で、削減に向けた取り組みを加速するよう檄を飛ばした。政府がこのタイミングで、大胆な目標を掲げたのには訳がある。
昨年6月、カナダで開かれた先進7カ国(G7)サミットで、政府は海洋プラごみ削減の数値目標を盛り込んだ「海洋プラスチック憲章」への署名を見送った。「国民の理解を得ずに数値目標が先行しても実効性に欠ける」(外務省幹部)と判断したためだが、国際社会には日本が後ろ向きだと批判された。政府は今回のG20で、環境先進国としての巻き返しを狙う。
そもそも、海洋プラごみは毎年800万トン以上が流出しているが、大半は中国やインドネシアなど東南アジアの国々が占めており、G20のメンバーとも重なる。排出量が少ないG7よりG20の方が、実効性を確保できる可能性は高い。
政府が策定した資源循環戦略は、プラごみの有効利用を令和17(2035)年までに進めるとした。G7の海洋プラスチック憲章では目標年次を22(2040)年としており、日本はこれを5年前倒しした。
政府はG20参加国に海洋プラごみ削減に向けた行動計画の策定を呼びかける考えで、議長国として高い目標を掲げることで議論を主導したい意向だ。「技術革新を加速させ経済成長につなげる」(秋元司環境副大臣)狙いもある。
ただ、足元には懸念も広がる。中国が2017年末にプラごみの輸入を禁止した影響で国内の処分が追いつかず、使用済みのプラごみが増加している。
環境省は今年5月20日、都道府県や政令市にプラごみ処分の受け入れを要請した。処分体制を早急に整備しなければ、目標が画餅になるおそれがある。(奥原慎平)
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