JR九州が業務効率化などを理由に駅を無人化したことについて、車いすを利用する大分市内の3人が23日、憲法などが保障する移動の自由を制限されて苦痛を受けたなどとして、同社を相手に1人あたり11万円の損害賠償を求めて大分地裁に提訴した。原告側代理人によると、無人駅をめぐって障害者が権利侵害を訴えて提訴したのは全国で初めて。
訴状によると、JR九州は2017年、大分市内の日豊線と豊肥線の計8駅を無人化する計画を発表。18年12月までに牧、敷戸、大分大学前の3駅を無人化し、カメラやインターホンで遠隔管理する「スマートサポートステーション」という仕組みを導入した。利用者が介助が必要な場合は事前に連絡し、調整するよう求めている。
原告の3人は、いずれも脳性マヒや交通事故の後遺症で障害があり、移動に車いすを使う。駅無人化で事前連絡が必要になったことで、急な予定に利用できないなど制約を受けるようになったという。事前連絡は障害のない人には設定されない条件で、社会的障壁をできるだけ取り除く「合理的配慮」を定めた障害者差別解消法などに違反していると主張。障害者が新たな負担を求められて苦痛を被ったと訴えている。
JR各社は経営の合理化のため、駅の無人化を進めている。原告が参加する市民団体「だれもが安心して暮らせる大分県をつくる会」などは、18年10月に7万3113筆の署名をJR九州に提出するなど無人化に反対してきた。JR九州によると、23日現在、全568駅のうち304駅がすでに無人駅になっている。原告側代理人の徳田靖之弁護士は「車いすや盲導犬を連れるなど社会的配慮が必要な人に社会はどうあるべきかが問われている。JR九州は公益企業で、採算だけで住民サービスを切り捨てることは許されない。障害者差別解消法では合理的配慮の提供は民間企業には努力義務とされているが、赤字解消のための無人化は不法行為に当たる」と話す。
提訴後、原告の社会福祉法人理事、吉田春美さん(67)は介助者を通じ、「障害者の社会参加の道を狭める無人化と事前予約を食い止め、安心して電車に乗りたい」と語った。JR九州は取材に対し「訴状が届いていない段階で何も申し上げることはない」としている。
駅の無人化は大分に限らず、沿線人口の減少や利用者減などを理由に、全国の鉄道事業者で進められている。国土交通省鉄道局によると、2018年度末時点で、全国9464駅のうち、無人駅は4478駅と5割に迫る。
JR九州は、鹿児島市でも今年5月、指宿枕崎線の8駅を新たに無人化した。すでに無人駅だった3駅を含め、計11駅に遠隔監視するスマートサポートステーション(SSS)を導入。19年度の乗車人員が1日平均2772人で、大分県内の中津駅よりわずかに少ない程度の谷山駅も、朝夕の一部時間帯を除いて無人になった。
福岡県内を走る西日本鉄道も、路線維持のために効率化が必要だとして、天神大牟田線と甘木線の七つの無人駅に加え、有人と一部時間帯が無人の計17駅を10月から無人化し、24駅で集中管理方式に変更する。
駅員不在で1時間待つことも
一方、駅を巡るトラブルは各地…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル