長崎の半島の町で暮らす谷崎昭治(しょうじ)さん(13)は、いつもにこにこしている。
昭治さんと追いかけっこをしたくて、妹たちは昭治さんをよくからかった。
それでも、幼い妹たちの相手を嫌がらない。冗談っぽく笑って、追いかけっこにつきあってあげる。
そんな昭治さんは、自宅から遠い長崎市の中学に行きたがった。下宿が必要で、お金がかかる。
父には言い出すことができず、「お父ちゃんに頼んで」と泣きながら母に頼んだ。
4月、希望していた中学校に、長崎市内の下宿から通い始めた。
8月6日。
広島に「新型爆弾」が落ちた。
「長崎も危ないのでは」。心配した父は8日、昭治さんを連れ戻しに、下宿を訪れた。
「明日の英語の試験は、どうしても受けなくちゃいけないから」
連れ帰ろうとする父を、昭治さんは泣いて断った。試験が終わったらすぐ帰れるように、と船賃を渡し、父は家に帰った。
9日、妹2人は、家の近くの砂浜で遊んでいた。
突然、強い光を感じた。兄がいる長崎の方向が光った気がした。怖くなってすぐに家に帰った。
「新型爆弾が長崎に落ちたら…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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