緊急事態宣言前最後の休日となった24日。東京都内の行楽地は家族連れなどでにぎわい、繁華街は昼間から杯を交わす若者らで混雑した。3度目の宣言は効果を発揮するのか。街の人たちからは、疑問の声も聞かれた。
正午前、八王子市の高尾山。標高472メートルにあるケーブルカー乗り場の周辺では、これから頂上をめざす人や、すでに登り終えて下山する人たち、売店の買い物客らで混雑していた。
「宣言が出る前に出かけておこうと思って」。町田市の会社員男性(40)は4歳の長男と次男を連れて来た。昨春の宣言中はどこにも出かけられず、息子たちがぐずって大変だったという。「密にならずに遊ばせられる場所は、近所の小さな公園くらいしかない。ゴールデンウィーク中は家で過ごすつもりです」
武蔵野市の山口美枝子さん(63)は、混雑を避けようと午前7時台に徒歩で登った帰りという。「朝なら人も少ないと思っていたのに、登山口周辺に50人くらいはいた」と驚く。
山頂はさらに混雑していた。マスクを外して会話する高齢者や、ビールで乾杯する若者の姿も。五輪を模したオブジェの近くには、写真撮影後の速やかな移動を促す看板を持った係員が立ち、互いに距離を空けるよう呼びかけていた。
高尾登山電鉄によると、25日以降もケーブルカーや観光リフトの営業は続けるが、さる園と野草園は休園し、レストランでの酒類の提供もやめる。常連登山者という三鷹市の女性(65)は「ガラガラだった昨年の春に比べてぐっと人が増えた。みんな、『室内でなければ大丈夫』という考えなのかも。宣言が始まっても、開いているところに人が集まるだけで、あまり人出は減らないのでは」(武田啓亮)
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午後4時前、上野・アメ横周辺。軒を連ねる居酒屋ではまだ明るいうちから、路地に広げたテーブルと椅子まで満席のにぎわいだ。
「3名様入れますよ」。呼び込みの声が響く。立ち飲み店のカウンターでもつ焼きを食べていた20代の会社員男性2人組は、瓶ビールを互いのグラスにつぎあった。「明日から店が閉まってしまうから、早めに飲みにきた」。25日から宣言解除までは、「家で静かに飲む」と口をそろえた。
立ち飲み店などがひしめく一画で、老舗中華料理店を営む野沢昌治さん(47)は「宣言が始まっても、酒を出したり、夜も営業したり、要請に従わない店はいくらでもあると思うよ」。
これまで、理不尽な思いをしてきたという。午後8時以降も営業を続ける店で飲んだ酔客が、営業自粛に従って閉めた店の前で嘔吐(おうと)したり、騒いだり。「うちはもちろん、要請には従います。酒が出せないのはつらいけどね。まじめにルールを守る店がバカをみないようにしてほしい」(高橋淳)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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