高校生へ、ガラス瓶に満ちる優しさ 原点は駄菓子屋での店主の思い出

 「この中にある小銭、本当にもらっていいのかな」

 ためらう高校生に、店主は励ますように声をかける。

 「地域の人たちが、みんなのためにと思って入れたお金だから、気兼ねなく使いなよ」

 「マジすか!」

 笑顔になった生徒は、カウンター上のガラス瓶から小銭を出してもらう。コーヒー代の全額をお願いする生徒もいれば、10円だけ頼む生徒もいる。

 青森県七戸町にあるコーヒー店「アモルコーヒー」の「学生応援募金」には、支払いを終えた大人の客がおつりや小銭を入れ、中身が空になる日はない。

 募金を始めたのは、店主の花松美佐さん(48)。東京出身で都内で暮らしていたが、夫が転職して故郷の七戸町に戻ることになり、一緒に移住してきた。

 店は2年前にオープン。移住後、地域おこし協力隊に入って活動するうち、町内に若者の交流拠点が少ないことに気づいた。

 「若い人たちが気軽に集まれる場所をつくりたい」。そんな思いだった。

 焙煎(ばいせん)や抽出の技術は、青森市の専門店に通って身につけた。

 開いた店の近くには、県立七戸高校がある。生徒たちが勉強や遊びに使えるように、パソコンと無料WiFiを用意。フリースペースも設け、飲食物の持ち込みもOKにした。

 だが、開店した当初、店に来る生徒は少なかった。コーヒーは450円、アイスカフェラテは500円。高校生にはちょっとぜいたくで、入りづらかったようだ。

 そこで思いついたのが、若者の飲み物代に役立てるための募金だった。

 それには自身の子どものころの思い出が絡んでいる。

こづかいをもらえなかった自分、手渡されたものは

 小学生のとき、家庭の事情で…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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