高齢者は重荷なのか 社員は「ばあちゃん」危機だから誓う起業家の夢

 人手不足が連鎖すれば、一人一人にのしかかる負担は大きくなる。前向きな未来を描くため、危機を突破する鍵はどこにあるのか。

連載「8がけ社会」

高齢化がさらに進む2040年。社会を支える働き手はますます必要になるのに、現役世代は今の8割になる「8がけ社会」がやってきます。今までの「当たり前」が通用しなくなる未来を私たちはどう生きるべきでしょうか。専門家の力も借りながら、解決に向けた糸口を探ります。

 高齢者を社会の「負担」と捉えれば、現役世代が減る「8がけ社会」が重苦しくなるのは避けられない。そうした未来は必然なのか。

 福岡市から車で1時間ほど。筑後川上流にあるうきは市の山あいを進むと、元々保育園だった建物からにぎやかな声が聞こえてきた。

 「最近、寒くなってきたねえ」「今日は昼過ぎに帰って畑仕事だ」。出勤した社員たちが雑談を交わしつつ、今日の仕事内容を相談していた。

社員の大半は「ばあちゃん」

 社員は約20人。その大半が75歳以上の女性、通称「ばあちゃん」が働く。そんな株式会社「うきはの宝」の調理場には、ばあちゃんの知恵が詰まった商品が並ぶ。スイーツや調味料、日持ちする総菜など手作りの商品を次々と開発し、オンライン販売の売れ行きは好調だ。特に30~40代の女性に支持されている。

 近所で採れた柿の皮を、まっすぐ伸びた姿勢で手際よくむいていく。まるで80代とは思えない社員の一人、内藤ミヤ子さん(87)が「家にいても旦那と二人で刺激がない」と打ち明けると周囲は大笑い。「働くようになって健康になった。病院にも行っていないしサプリも飲んどらん」と胸を張った。

 雇用に加え、高齢者の生きがいも作ってビジネスにできれば、地域全体は元気になる。同社を創業した大熊充さん(43)は「世代間対立や老害という言葉がとても嫌いで」、会社を作った動機はそんな「固定観念」への反発だったという。

入院で知った、ばあちゃんのエネルギー

 うきは市出身だが、30代まではデザイナーとして働きづめだった。生活を犠牲にして働く中で「社会や地元のためになっているのか」との疑問が何度も頭をもたげた。

 20代の頃、バイク事故で長期間入院した。一緒に入院していたばあちゃんたちは、うるさいほどおせっかい。でもそれが、落ち込む自分を元気づけてくれた。

記事の後半では、あらゆる仕事の現場を人手不足が襲う「8がけ社会」の危機を突破する鍵を探ります。テクノロジーを駆使する起業家は「楽しさ」が社会を変える力になる、と語ります。

 まるでお荷物のように言われ…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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