重症者を優先する医療体制への移行を進める観点から軽症者には自宅療養を求める-。政府の専門家会議は先日、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえた対策について、このような検討を進めるよう提言をまとめた。これを受けて全国介護付きホーム協会(介ホ協)は3月31日に厚生労働省老健局の担当者と意見交換を行った。有料老人ホームなどの高齢者向け住まいの入居者が感染した場合の感染拡大について懸念を伝え、入居者が感染した場合の優先的な入院や専用の宿泊施設の準備を求めている。【吉木ちひろ】
新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が3月19日にまとめた提言は、政府や地方公共団体に対して、地域の感染拡大の状況に応じて「入院治療が必要ない軽症者や無症状の陽性者は、自宅療養とする」ことなどの検討を進めるよう求めている。
限られた人員や医療資源を継続的に確保するためのものだが、高齢者が集団で生活を送る入所・入居系サービスの事業所でも同様に感染者の療養が求められれば、重症化リスクの高いほかの入居者を危険にさらすことになりかねない。
介ホ協は、こうした懸念を老健局の担当者に伝えるとともに、提言の中の「自宅」と高齢者向け住まいとは明確に区別するよう求めた。また、入院が困難な場合には、宿泊施設や開設前の特別養護老人ホームなどを用いて、軽症の入居者が療養できる施設を準備することも要望している。
■「入浴は週1回」など業務簡素化の臨時的な扱いを確認
このほか、介ホ協は意見交換の中で、サービス事業所の入居者に対する、▽PCR検査の優先実施▽職員が減少する中での業務簡素化▽「緊急事態宣言」の発出時における介護施設に対する人員・物資の確保-に関する厚労省衛生部局(保健所などを管轄)との調整を要望した。
業務簡素化については、介ホ協の一部会員によって提案された方法を個別に示した。具体的には、▽入浴は週1回とする▽食事に関連して嗜好対応は行わず、飲料に関しても一律に、ほかの個別対応もしない▽栄養面には配慮しつつ、食事提供の機会を2回にする(朝と昼を一緒にしてブランチにする等)ことを検討する▽濃厚接触疑いの入居者に対する身体拘束・行動制限に関して、身体的拘束の三要件の判断基準を緩和する-ことなど。
老健局の関係部署は2月27日以降、事務連絡などによって、新型コロナウイルス感染症対応として人員基準などの柔軟な取り扱いを認めることを示しており、介ホ協は意見交換の場で、これらの具体的な業務簡素化案について「柔軟な取り扱いに該当することをお認めいただける」との考えを示した。
介ホ協の担当者によると、老健局側はこれらの訴えについて最終的には自治体の判断になるとしたものの、「クラスター対策の観点からも大枠では理解をいただき、前向きに受け止められたものと考えている。今後、何らかの見解を示してもらえるのではないかと期待している」としている。
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