札幌市で2013年、道立高校1年の男子生徒(当時16)が自ら命を絶ったことをめぐり、母親(54)と北海道教育委員会の話し合いが平行線のままだ。教員の不適切な指導による「指導死」を訴えて第三者委員会による調査・検証を求める母親に対し、道教委は応じない考えを崩さない。専門家は第三者の検証を再発防止につなげる必要性を説く。
「司法で指導が不適切だったという認定が出ても、道教委にはなかなか向き合ってもらえないと感じた。このままでは悠太に報告ができない」
母親は9月、初めて実現した道教委との話し合いのあと、声を詰まらせながら話した。
記事の後半では、教育評論家の武田さち子さんが、子どもの心と命を守ることを第一にする重要性について語ります。
昨年11月、悠太さんの自殺をめぐり母親が道に損害賠償を求めた「指導死訴訟」の控訴審の札幌高裁判決は、自殺前日の吹奏楽部顧問の教諭の指導について「適切とはいえない」と認めた。ただ、「それ自体で自殺の結果を招くような強い心理的負荷を与える危険な指導方法とまではいえない」と指摘。自殺は予見できなかったとして道の責任を否定した。母親、道ともに上告せず、判決は確定した。
母親は7月、道教委に対し、第三者委による調査・検証や具体的な再発防止策の策定を求める要望書を提出。面談して話し合うことも求めていたが、道教委は応じていなかった。9月上旬の道議会文教委員会でこの問題の道教委の対応について大越農子議員(自民党・道民会議)が質問したことがきっかけで、9月24日にようやく実現した。
母親はこれまで行政文書の開示請求をしたり、教員の指導にまつわる文部科学省の通知や他の自治体で起きた事例を調べたり、「指導死」について考える集会に出かけたりしてきた。集めた資料は分厚いファイル30冊以上にもなった。
道教委との2度目の面談が行われた10月29日、母親は道監査委員に対し、悠太さんの自殺後に全校生徒に行ったアンケートの原本を学校が破棄したことへの110万円の賠償は、道の公金ではなく、当時の校長など責任ある者が補塡(ほてん)すべきだとして、知事に勧告を求めた。責任の所在をはっきりさせたいという思いからだ。
母親は言う。「判決が出て終わりなのではなく、ここが出発点。道教委には、悠太のようなことが再び起きないように真摯(しんし)に向き合い、一緒に考えてほしい」(芳垣文子)
教育評論家の武田さち子さん…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル