須田世紀
静岡県浜松市の郷土史家が長年思ってきた地元の神社にまつわる疑問を解明した。今年の秋分の日の23日早朝、近所の人に集まって見てもらったら、歓声が上がった。この郷土史家は「地域の歴史に興味を持つきっかけになればうれしい」と話している。
23日の夜明け前、同市東区半田町。小高い場所にある六所神社。ここに回覧板を見た人たち50人以上が集まった。
秋分の日は、太陽が真東から昇って真西に沈む。鳥居の真ん中を太陽が昇っていけば、神社が朝日を意識して造られたことになる。それを確認してもらおうというねらいだ。
呼びかけたのは、浜松日体中・高校の事務職員で、地域の歴史を調べている小杉順哉さん(42)。神社の鳥居には「朝日宮」の文字があり、「どこに朝日と関係があるんだろう」と思い続けた。
一般的に神社は南向きが多いが、同神社は真東を向いている。「もしや」。2018年、真東から太陽が昇る春分の日と秋分の日に日の出を確認しに同神社に向かった。予想は的中。顔を出した太陽は鳥居の真ん中を通った。
さらに、日の出の瞬間、太陽光は拝殿の格子を通り、奥にある本殿まで届くことにも気づいた。太陽光がある場所を指し示すシーンがある冒険映画「インディ・ジョーンズ」がこの発見のヒントになったという。「朝のさわやかな日光を神様に届けようと設計されている」と小杉さんは考えている。
23日の見学会では、午前5時40分ごろに太陽が見え始めると小さな歓声が上がった。母親と見学に来た小学5年生の男児(11)は「神秘的だった」と満足そう。小杉さんは「普段は閑散とした神社に大勢の人が集まってびっくり。地域の歴史に興味を持つきっかけになればうれしい」。神社がパワースポットとなり、地域に元気をもたらしてくれることも願っている。(須田世紀)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル