麦の撮影をライフワークにする写真家がいる。麦に見いだす魅力はその生命力の強さ。6年間で撮ったのは6万枚超。その1枚が今年、世界最大級の写真コンテスト「ソニーワールドフォトグラフィーアワード」の日本部門で最優秀賞に輝いた。受賞作は18日まで、東京・銀座で展示される。
受賞作の名前は「PHOENIX(フェニックス)」。野焼き中の麦畑をドローンを使って上空から撮り、想像上の火の鳥になぞらえた。撮影したのは、佐賀市の平野はじめさん(37)。「麦」と「フォトグラファー」を合わせ、「麦グラファー」を自称する。
平野さんは同市出身。麦畑が身近な環境で育った。音楽やファッションなどの趣味は個性的で、「一人の世界を愛する性格」だという。中学卒業後、一時は高校に通ったが中退。バーテンダーやとび職など仕事を転々とした。20代はフリーのグラフィックデザイナーとしてロゴ制作などをしていたが、何が本当にしたいことなのかは、わからないままだったという。「目的がないまま人生を終えたくないな」。そんな気持ちが日を追うごとに強くなり、27歳だった2013年7月に、北米の雄大な景色に憧れてカナダ・バンクーバーに渡った。
写真の魅力に気づいたのはこのころだった。日本では見たことのない建物や風景の魅力を家族や友人に伝えたいと写真を撮り続けた。15年に帰国し、フリーのカメラマンとなったが、納得できる写真は撮れずにいた。そんなとき心を動かされたのが17年春、よく晴れた夕方のこと。自宅近くを車で走っていた際、等間隔に植えられ、風に揺れて黄金色に輝く麦畑に目を奪われた。
「地元にもこんなきれいな場…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル