鼻水垂らした「癒やし猫」トラ 入居者に生きる力与えた

それぞれの最終楽章・ペットとともに(6)

特別養護老人ホーム施設長 若山三千彦さん

 今回は、癒やし猫「トラ」とTさん(享年89)の物語です。トラは保護猫出身のオス。お世辞にも美猫とは言えませんが、持病の肺炎でいつも鼻水を垂らした姿が、なぜか入居者さんを安心させました。人なつっこく、誰にでもスリスリしました。トラと出会い、元気さを取り戻したお年寄りはたくさんいました。Tさんもその一人だったのです。

 Tさんが入居したのは、2014年1月。猫が大好きで、自宅でも歴代で50匹以上の猫を飼ってきました。でも妻を看取(みと)ってからは、猫を飼うことはあきらめました。すると認知症が悪化、元気がなくなってしまいました。心配した息子さんが「再び猫との暮らしを実現させてあげよう」と思い、うちの施設完成と同時に申し込んできたのです。

 入居すると、最初にTさんにすり寄っていったのはトラでした。その瞬間、Tさんの顔がパッと輝いたのを覚えています。入居前は認知症の影響で、ぼんやりとした表情をしていたのに、です。あー、この人にとって猫の存在は、何よりも大きいんだなあ、と実感しました。

 その後、トラはいつもTさんと…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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