どうして日本は戦争に負けたんですかね。もし勝っていれば今ごろ、青い目の人が丸まげ結って三味線弾いて……と冗談めかして語る軍隊時代の部下に、主演の笠智衆は穏やかな笑みを浮かべて言う。
「けど、負けてよかったじゃないか」
真顔になった部下が応じる。
「そうですかね。うん、そうかもしれねえな。バカな野郎が威張らなくなっただけでもね」
小津安二郎監督の映画「秋刀魚(さんま)の味」(1962年)を見て、このセリフをかみしめながら、9月11日、内閣改造が行われた日の夜をやり過ごした。74年前、東条英機元首相が戦犯として逮捕される直前に自殺を図り、未遂に終わった日でもある。…… 本文:1,522文字
朝日新聞社
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